SSブログ

21. 時事問題の基礎入門講座(2016.9.10の講座のテキスト)最新版 [2016.9.10の講座のテキスト]

21. 時事問題の基礎入門講座(2016.9.10の講座のテキスト)最新版(2016.9.10 午前9時)

(a) 日本の政治、外交、防衛

・安倍首相、プーチン大統領と会談(2016.9.3)

安倍首相は、2日ロシア極東のウラジオストクで、ロシアのプーチン大統領と会談しました。
日本側の説明によりますと、両首脳は、プーチン大統領が、12月15日首相の地元・山口県長門市を訪れ、日ロ首脳会談を行うことで合意しました。また、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進め方などについて意見を交わし、今年5月に合意した「新しいアプローチ」に基づいて日ロ交渉を加速することを確認しました。首相は、5月の会談で、極東のエネルギー開発など8項目の経済協力を提案しており、今回の会談で、日ロ両政府で協議会を立ち上げエネルギー協力の議論を進めるなど8項目のさらなる具体案を示しました。
ロシアのパブロフ外相によりますと、今回会談は経済協力が中心で、ロシア側は、8項目の具体案を歓迎したということです。

・ニュースの用語解説

5月ソチでの日ロ首脳会談
安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は、5月6日、ロシア南部ソチで会談し、平和条約締結問題について双方が受け入れ可能な解決策の作成に向け「新たな発想に基づくアプローチ」で精力的に交渉を進める」ことで一致しました。北方領土問題を含む事務レベルの平和条約締結交渉を6月に開くことでも合意しました。
 会談で、安倍首相は、平和条約問題について「今までの交渉の停滞を打破しよう。問題解決にはグローバルな視点も考慮したうえで未来志向で交渉するアプローチが必要だ」と提案しました。 安倍首相は、ロシア国民の生活環境の改善や産業経済革新に向けた8項目の協力プランを提案し、そのうち、エネルギー開発や医療、都市づくり、中小企業交流などでの協力強化が柱だと述べ、「これが実現できれば両国関係を2人で大きく深めることができる」と指摘しました。プーチン大統領は「すばらしい提案だ。実現させたい」と応じたということです。
 しかし、北方領土問題を巡っては、日本政府は4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するというのが基本方針で、平和条約締結後の2島返還が明記された1956年の日ソ共同宣言を重視するロシア側との溝は深く、「新しいアプローチ」で進展に結びつけられるかどうかは、今後の課題になっています。

・安倍首相、習近平国家主席と会談(2016.9.5)

安倍首相は、5日訪問先の中国・杭州で、中国の習近平国家主席と会談しました。
日本側の説明によりますと、両首脳は、尖閣諸島をめぐる東シナ海の問題では、それぞれの主張を述べ合ったうえで、東シナ海での偶発的な衝突を避けるための「連絡メカニズム」の早期運用開始に向けて協議を加速するなど、対話を重ねることで一致しました。
安倍首相は、また、南シナ海の問題について、「国際法のルールを守り、周辺国の不安解消に努めてほしい」と述べました。
中国の国営新華社通信によりますと、習主席は、南シナ海については、「日本側は、言動を慎み、中日関係改善の障害となるのを防ぐべきだ」と語ったということです。

・ニュースの用語解説

南シナ海領有権問題
南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島 Spratly Islands)、西沙諸島(パラセル諸島 Paracel Islands)などの領有権をめぐる中国、台湾、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国との対立のことで、南シナ海は、海上交通の要衝で豊かな漁場であり、石油・天然ガスの資源の存在も指摘されています。特に中国は、南シナ海のほぼ全域に権利が及ぶと主張し、南沙諸島に人工島の造成を進め、軍事拠点化する動きを見せています。
南シナ海は、世界有数のシーレーン(海上交通路)で、中東から日本などへ石油を運ぶタンカーの大半が航行しますので、日本にとっても重要な海域です。
7月、オランダのハーグの国際的な常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張していることについて、これを認めないという判断を示しました。
これは、フィリピンが「中国の主張は国際法に違反している」として、3年前仲裁裁判を申し立てていたもので、原告のフィリピンの訴えが認められました。
南シナ海をめぐり、国際法に基づく判断が示されたのは、初めてです。仲裁裁判では、原則として上訴することはできず、今回の判断が最終的な結論になります。
中国外務省は、ただちに声明を発表し、「判断は無効で、拘束力はない。中国は、これを受け入れず、認めない」と述べました。

今回9月ラオスで開かれたASEANを中心にした一連の会議では、7日安倍首相が、ASEANと日本の首脳会議で、東シナ海や南シナ海で一方的な現状変更の試みが続いていると懸念を表明したうえで、南シナ海での中国の主張を認めなかった国際的な仲裁裁判所の結果を尊重し、国際法の下での平和的な解決をめざす必要性を強調し、理解を求めました。
6日と7日に開かれたASEAN首脳会議では、南シナ海の問題をめぐって、法的拘束力を持つルールの策定に向けた交渉の加速では合意しましたが、東シナ海での中国の主張を否定した仲裁裁判所の判断については踏み込んだ議論は行われませんでした。
7日のASEANと中国の主脳会議では、東シナ海の問題の解決に向け法的拘束力を持つルールづくりの協議を来年中ごろまでに終わらせることで合意しました。共同声明では、仲裁裁判所の判断については言及がなく、交渉は、「直接関係のある主権国家が行う」と明記し、域外の国の関与を排除しようとする中国の主張が色濃く反映されています。

・安倍首相、パク・クネ大統領と会談(2016.9.7)

安倍首相は、7日訪問先のラオスのビエンチャンで、韓国のパク・クネ大統領と会談しました。
日本側の説明によりますと、両首脳は、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を非難し、連携して対応することを確認しました。また、慰安婦問題をめぐる昨年末の日韓合意を着実に実施することが重要だとの認識で一致しました。

。ニュースの用語解説
2015年12月の日韓合意
2015年12月、日本と韓国の両政府は、ソウルで開いた外相会談で、旧日本軍の従軍慰安婦問題の最終決着で合意しました。
これは、日本の岸田文雄外相と韓国のユン・ビョンセ外相が会談した後、共同記者会見で明らかにしたもので、今年日韓国交正常化50年にあたる節目に、両国間の最大の懸案の一つである従軍慰安婦問題を解決することで合意したものです。
共同記者会見で、岸田外相は、「安倍首相は、日本国の首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に心からのおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。
また、岸田外相は、韓国が設立する財団に日本政府がおよそ10億円の資金を一括して拠出し、日韓両政府が協力して元慰安婦を支援する事業を行っていく方針も表明しました。
ユン外相は、日本政府が撤去を要求しているソウルの日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像について、「日本政府が、大使館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行うなどして、適切に解決されるよう努力する」と述べました。

(b) 日本の経済、貿易


(c) 日本の社会


(d) 国際情勢

・北朝鮮、5回目の核実験(2016.9.9)、国連安保理声明(2016.9.9)

北朝鮮が、5回目の核実験を行いました。
北朝鮮の国営・朝鮮中央テレビは、9日臨時ニュースで、北東部で初めての核弾頭の爆破実験に成功したと発表し、5回目の核実験を行ったことを明らかにしました。
北朝鮮が核弾頭の爆破実験に成功したと発表したのは今回が初めてです。
北朝鮮は、2006年1回目の核実験を行い、それ以降3年から4年おきに核実験を行ってきましたが、今回は、今年1月の4回目の核実験以来わずか8か月という異例の短い間隔で行われたことになります。
北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長は、今年3月、さまざまな種類の弾道ミサイルの発射実験とともに、核弾頭の爆破実験を行うための準備を指示していました。
北朝鮮としては、今回の実験で、核兵器の小型化を進め、弾道ミサイルに搭載できる核弾頭の開発が進んでいることを誇示する狙いがあるものとみられます。

日本政府は、ただちに北京の大使館を通じて、強く抗議しました。
安倍首相も声明を発表し、「断じて容認できず、最も強い言葉で非難する」としたうえで、アメリカや韓国など関係国との協力を強化して、国連安全保障理事会も含め、北朝鮮への対応を検討すると述べました。
菅官房長官は、記者会見で、日本独自の追加の制裁措置を検討する考えをしめしました。
安倍首相は、アメリカのオバマ大統領と電話会談し、国連安全保障理事会での新たな制裁を含む厳しい決議の速やかな採択に向けて、日本とアメリカに韓国を加えた3か国で緊密に連携していくことで一致しました。

オバマ大統領は、9日、安倍首相と韓国のパク・クネ大統領とそれぞれ緊急の電話協議をした後に声明を発表し、核実験を強行した北朝鮮に対し、新たな制裁を含む「重大な追加措置」を取ることを目指すことで合意したと明らかにしました。

一方、国連安全保障理事会は、日本、アメリカ、韓国3か国の要請を受けて、北朝鮮の核実験をめぐって9日)緊急会合を開き、核実験は安保理決議の明白な違反であり、「国際平和と安全のとって明らかな脅威」として強く非難する報道機関向けの声明を発表しました。
そして、「違反の深刻さに鑑み、安保理は迅速に適切な措置をとる」と警告し、今後北朝鮮に対する追加的な制裁措置も視野に入れて、各国が協議を続ける方針です。

・北朝鮮、弾道ミサイル3発発射(2016.9.5)、国連安保理声明(2016.9.6)

北朝鮮は、5日朝鮮半島の西側から日本海に向けて中距離弾道ミサイルの「ノドン」とみられるミサイル3発を発射し、いずれも1000キロメートル前後飛んで
日本の排他的経済水域に落下しました。
「ノドン」は、射程が1300キロメートルで日本全体がほぼ射程に入る中距離弾道ミサイルで、国営の朝鮮中央通信は、6日キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の立ち合いの下で弾道ミサイルの発射訓練を行ったと発表しました。
北朝鮮は、3月の国連安全保障理事会の制裁決議以降、少なくとも22発の弾道ミサイルを発射したとみられています。
一方、国連安全保障理事会は、6日、北朝鮮の度重なるミサイルの発射をきびしく非難するとともに、制裁決議の完全な履行を改めて各国に求める報道機関向けの声明を発表しました。

・シリア、12日から停戦へ(2016.9.10)

アメリカとロシアは、内戦が続くシリアで、アサド政権と反政府勢力が今月12日の日没からシリア全土で停戦することで合意したと発表しました。
これは、アメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相がジュネーブで協議した後、10日共同記者会見で発表したもので、12日から1週間停戦が守られた場合、アメリカとロシアとの間で、過激派組織「IS=イスラム国」などに対して、協力して対処するということです。

一方、イギリスを拠点にシリア内戦の情報を集めている「シリア人権監視団」が明らかにしたところによりますと、6日北部のアレッポが空爆を受けた後、70人余りの住民が呼吸困難の症状を訴えたということです。空爆を受けたのは、反政府勢力が支配している地域で、反政府勢力は、政府軍が化学兵器禁止条約で使用が禁止されている有毒な塩素ガスを使用したと非難しています。

・東アジアサミット(2016.9.8)

ASEAN=東南アジア諸国連合10か国と日米中韓など域外8か国の首脳が参加した東アジアサミットは、8日ラオスの首都ビエンチャンで開かれ、南シナ海問題などで意見を交わしました。
会議では、日本の安倍首相とアメリカのオバマ大統領は、中国に対し、中国の主張を否定した国際的な仲裁裁判所の判断は法的拘束力があるとし、受け入れるよう求めました。
これに対し、中国の李克強首相は、「仲裁裁判は無効」だとする中国の立場を繰り返し主張し、中国とASEAN諸国が南シナ海で法的拘束力を持つルール「行動規範」の策定に向けた協議を推進することで合意したことを指摘しました。そして、域外の関係のない2つの国が仲裁裁判の話を持ち出し、中国とASEANの仲を引き裂こうとしているとして、日本とアメリカの対応を批判したと伝えられています。
ASEAN諸国の首脳は、「武力によらない国際法に基づく解決」を求め、仲裁裁判所の判断については、触れなかったといわれています。
一方、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返している北朝鮮の問題については、東アジアサミットでは、各国が一致して、北朝鮮に核兵器や弾道ミサイルの開発を放棄するよう求める内容の声明を全会一致で採択しました。


・G20閉幕(2016.9.5)

日米欧の先進国と新興国からなる20か国の首脳会議・G20サミットは、5日中国の杭州での2日間にわたった討議を終え、世界経済の持続的な成長のため「すべての政策手段を活用する」と明記した首脳宣言を採択して閉幕しました。
首脳宣言は、世界経済について「回復が継続しているが、引き続き成長は期待よりも弱く、下方リスクが存在する」と分析したうえで、各国の事情に応じて、金融政策、財政政策、構造政策を個別または総合的に用いるよう求めています。
中国などが鉄鋼の過剰生産能力を抱える問題をめぐっては、「世界的な課題」との認識を共有し、解決へ向けて生産国が参加する新たな協議体「グローバル・フォーラム」の設立で合意しています。
首脳宣言は、また、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済・金融の安定に悪影響を与えることや通貨の競争的な切り下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としないことを再確認する」としています。
世界経済に影響する重要な課題として、イギリスのEU=欧州連合離脱をあげ、「今後イギリスがEUの緊密なパートナーであることを希望する」とし、アメリカと中国両政府が批准した2020年以降の地球温暖化対策の「パリ協定」をめぐっては、他のG20諸国に早期に国内手続きを求めています。

・ニュースの用語解説
G20(Group of 20)は、G7のカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカに、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、EU=欧州連合・ECB=欧州中央銀行の20の国と地域です。

・米中、地球温暖化対策のパリ協定へ参加(2016.9.3)

アメリカと中国両政府が、3日、中国・杭州でのG20首脳会議の開幕を前に、2020年以降の地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の批准を決めました。
オバマ大統領と習近平国家主席は、国連のパン・ギムン事務総長に「パリ協定」への惨禍を表明する文書を手渡しました。
これによって、「パリ協定」は、年内にも発効する見通しです。

・ニュースの用語解説
「パリ協定」
「パリ協定」は、1997年採択された京都議定書に代わる新たな国際ルールで、2020年以降の温室効果ガスの排出削減に取り組むためのものです。昨年末パリで開かれた国連気候変動会議(COP21)で採択されました。
先進国のみに温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書とは違い、「パリ協定」では、全ての国が削減目標を自主的に作って報告し、その達成に向けた対策を取ることが義務づけられています。
「パリ協定」は、世界全体の排出量の55%以上、55か国以上が締結した30日目に発効することになっています。
日本は、これまでは「パリ協定」の早期締結には消極的で、「主要排出国の動向を見てから」としていましたが、米中の動きをみて、26日開会予定の臨時国会に審議を前倒しする準備を進めていると伝えられています。

・リオ・パラリンピック開幕(2016.9.7)

障碍者スポーツの祭典パラリンピックは、7日ブラジルのリオデジャネイロで開幕しました。
南米では初めての大会で、159の国と地域からおよそ4300人の選手が参加し、18日までの12日間22競技528種目で熱戦が繰り広げられます。
4年後に開催地となる東京大会を控える日本からは、132人の選手が参加しています。


タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

20. 時事問題の基礎入門講座(2016.8.13の講座のテキスト)(最新版) [2016.8.13の講座のテキスト]

20. 時事問題の基礎入門講座(2016.8.13の講座のテキスト)(最新版)

(a) 日本の政治、外交、防衛

・岸田外相、韓国外相と電話会談、元慰安婦への支援事業に10億円拠出発表(2016.8.12)

岸田外相は、12日韓国のユン・ピョンセ外相と電話でおよそ30分間会談しました。会談の後、岸田外相は、記者団に対し、韓国政府が元慰安婦を支援するために設立した財団の事業内容について大筋合意し、日本政府は、財団に拠出する10億円についてすみやかに手続きを進めると発表しました。
日韓両政府は、昨年12月の合意に基づき、韓国政府が元慰安婦を支援する財団を先月設立したことを受けて、日本政府が拠出する10億円で賄われる元慰安婦への支援事業について、事務レベルで詰めの調整を続けてきた結果、大筋合意したものです。
岸田外相は、これについて、「医療や介護関係にあてられることを想定している」と述べました。日本側は、1965年の日韓請求権協定に基づいて、賠償金の問題は、解決済みという立場をとっており、岸田外相は、「10億円は事業を行うための支出で、請求権問題は法的に解決済みという立場に全く変わりはない」と強調しました。さらに、10億円の拠出によって、日韓合意に基づく日本側の責務は果たしたことになる」と述べました。そして、岸田外相は、ソウルの日本大使館前に設置された少女像の撤去について、「適切に解決されるよう努力する」とした日韓合意の内容を進めるよう韓国側に求め続けると述べました。

・ニュースの用語解説

韓国政府が元慰安婦を支援するために設置した財団は、「和解・癒し財団」といい、財団が実施する元慰安婦や遺族への事業の対象は、韓国政府に登録された元慰安婦ら計245人になる見通しです。日韓合意後、元慰安婦は6人が死亡し、生存者は40人で、平均年齢は90歳近くになっています。
日韓合意をめぐっては、韓国では、一部の元慰安婦や市民団体が反発し、一方日本では、ソウルの日本大使館前の少女像の速やかな撤去を求める声があがっています。

・岸田外相、中国公船の領海侵犯で抗議、中国反発(2016.8.9)、

岸田外相は、9日、中国の程永華駐日大使を外務省に呼び、中国の公船が沖縄県・尖閣諸島魚釣島沖の日本の領海への侵入を繰り返していることに抗議しましたが、中国の大使は、この海域は中国の固有の領土であり、自国の船舶が活動するのは当然だと反論しました。
中国の領海警備などの任務を担う中国の公船による尖閣諸島周辺での日本の領海侵入は、5日から9日朝までに合わせて20回あり、領海の外側の接続水域には、一時中国の漁船およそ400隻を伴い、過去最多となる合わせて15隻の公船が入りました。日本政府は、4日連続で抗議しましたが、中国側が活動を中止しないため、抗議のレベルをあげ、外相が抗議したものです。しかし、外相が抗議したあとも、中国側の領海侵入は続いていたということです。10日は、領海侵入はないものの、接続水域での活動は、続いているということです。

一方、日本政府関係者が10日明らかにしたところによりますと、中国が8月中旬に予定していた孔鉉佑外務次官補の訪日を取りやめると日本側に伝えてきたということです。孔氏の訪日は、日中韓外相会談の開催に向け、中国の王毅外相の訪日を日本側と最終調整することが目的でしたので、8月下旬に日本での開催を調整していた日中韓外相会談も困難との見方が強まっています。さらに、日本政府は、9月中国で開かれるG20=主要20か国首脳会議の際、日中首脳会談開催を期待していましたが、それにも影響を与えそうです。

・ニュースの用語解説

尖閣諸島は、東シナ海の南西部にある島嶼群のことで、魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬などで構成されています。戦前は、日本人居住者がいた時期がありましたが、いずれも無人島になっています。現在日本が実効支配しており、中国(中華人民共和国)および台湾(中華民国)がそれぞれ領有権を主張しています。

国連海洋法条約では、領海は、海岸線から12カイリ(約22km)までで、領土と同様。その国の主権が及ぶ水域です。EEZ(= Exclusive Economic Zone 排他的経済水域)は、海岸線から200カイリ(約370km)の範囲内(領海は含まない)で、沿岸国は、EEZ内で領海と同様、魚介類や石油・天然ガスなどの資源を探査・開発できます。その代わり、資源の取り過ぎや海の汚染を防ぐ義務があります。外国の船も自由に通れますが、漁や採掘はできません。接続水域は、領海から外側へ12カイリ(約22km)までの水域で、外国の船も自由に通れますが、沿岸国は、密輸や密入国などを防ぐため、疑わしい船を立ち入り検査できます。

・北朝鮮のミサイル秋田沖に落下(2016.8.3)

北朝鮮が3日発射した弾道ミサイルが、秋田県の沖会およそ250キロまで飛び、初めて日本の排他的経済水域の中に落下しました。日本政府は、ただちに北朝鮮に対して強く抗議しました。
防衛省によりますと、北朝鮮は、3日中距離弾道ミサイルのノドンとみられる1発を北朝鮮の西岸から発射し、およそ1000キロ飛んで、秋田県の沖合およそ250キロの日本の排他的経済水域の中に落下したということです。現場の海域ではミサイルの一部とみられる破片が浮いているのが確認され、防衛省は、それらを回収して詳しく調べたものとみられます。
政府は、安倍首相、岸田外相、中谷防衛相らが出席してNSC=国家安全保障会議を開き、アメリカや韓国など関係国と連携して、情報の収集や分析につとめることを確認しました。

一方、国連安全保障理事会では、北朝鮮のミサイル発射についての対応について協議してきましたが、アメリカ、韓国、日本は、連携して厳しい声明の採択を目指してきましたが、中国は、これに反対する姿勢を崩さない上、発射を非難していた数か国からも北朝鮮を刺激することは避けたいという意見がでてきたことから、9日安保理では声明の発表を見送ることになったということです。中国は、米韓両国が7月に決めた在韓米軍の迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」の韓国配備に反発し、交渉では、「関係国は、北朝鮮の核ミサイル開発の脅威を理由に、北東アジアに新たな弾道ミサイル迎撃システムを配備するべきではない」という文言を入れるよう求めたと伝えられています。

・ニュースの用語解説

今年3月国連安全保障理事会は、北朝鮮による4度目の核実験と事実上の長距離弾道ミサイルの発射を受け、北朝鮮に対する制裁を強化する決議を全会一致で採択しました。北朝鮮産鉱物の輸入禁止などが新たに盛られ、北朝鮮に出入りする貨物の検査や金融制裁を強化し、モノ・カネ・ヒトの流れを大幅に制限する内容です。
しかし、それ以降、北朝鮮は、中距離ミサイルのノドン、ムスダン、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルなどを含む少なくとも17発のミサイルを発射したとみられています。
現在北朝鮮は、1000発以上のミサイルを保有しているとみられ、短距離ミサイルのスカッド(射程距離300~500km)およそ800発、中距離ミサイルのノドン(1300km)200発とムスダン(3000km以上)40発、長距離ミサイル(10000km以上)数不明となっています。

・天皇陛下、生前退位強く示唆(2016.8.8)

天皇陛下が、国民向けのビデオメッセージの中で、生前退位の意向を強く示唆されました。
現在82歳の天皇陛下は、「次第に進む身体の衰えを考慮する時、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか」と懸念を表明され、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じる」と述べられ、務めが果たせなくなる前に皇位を皇太子さまに譲りたい意向を強く示唆されました。
天皇陛下は、憲法上の立場から皇室制度に具体的に触れることは差し控えるとして「私が個人として」の立場を強調され、生前退位の意向を強くにじませました。
天皇陛下は、天皇の高齢化で、公務や国事行為を縮小することは、「無理があろうかと思われます」と述べられ、負担軽減には否定的な見解を示され、また、、天皇の行為を代行する摂政についても、天皇が十分に務めを果たせぬまま、生涯天皇であり続けることに変わりはないと述べられ、望ましくないという考えを話されました。
天皇陛下は、「天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます」と述べられました。

安倍首相は、天皇陛下のご意向表明を受け、記者団に、「ご公務のあり方などについては天皇陛下のご心労に思いを致し、どのようなことができるのかしっかり考えていかなければいけない」と述べました。
政府は、今後、有識者から広く意見を聞くなどし、世論の動向を踏まえたうえで、どのような対応が可能か検討を進めていく方針です。

・ニュースの用語解説

天皇や皇位継承に関する規定
・憲法
第1条―天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
第2条―皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第4条―天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する機能を有しない。
(注)天皇の国事行為というのは、憲法上、天皇が国事に関して行う形式的、儀礼的行為のことで、内閣の助言と承認を必要とし、その責任は内閣が負います。具体的には、内閣総理大臣の任命、最高裁判所長官の任命、憲法改正・法律・政令・条約の交付、国会の召集、衆議院の解散、国会議員の総選挙の施行の公示、国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大使・公使の信任状の認証、大赦・特赦など恩赦の認証、栄典の授与、批准書および法律の定めるその他の外交文書の認証、外国の大使・公使の接受などです。
・皇室典範
第1条―皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第4条―天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
(注)皇嗣というのは、皇位継承順位1位の皇族のことです。

・安倍再改造内閣発足(2016.8.3)

安倍晋三首相は、3日内閣改造を行い、皇居での認証式を経て第3次安倍再改造内閣を発足させました。
安倍首相は、麻生太郎副首相兼財務相、菅義偉官房長官、石原伸晃経済財政・再生担当相、岸田文雄外相ら経済や外交の要となる主要閣僚を留任させ、経済政策アベノミクスと積極的平和主義に基づく外交路線を引き続き推進していく考えです。
また、防衛相には、将来のリーダー候補として重用してきた自民党政調会長だった稲田朋美氏をあてました。
アベノミクス推進の一環として今回新設された働き方改革担当相は、側近の加藤勝信・一億総活躍担当相に兼務させ、同じく側近の官房副長官だった世耕弘成氏を経済産業相にあてました。
さらに、高市早苗総務相を留任させ、公明党の石井啓一国土交通相も留任させました。
オリンピック・パラリンピック担当相には丸川珠代環境相をあてました。

・ニュースの用語解説

・自民党新執行部(2016.8.2)
総裁―安倍晋三、副総裁―高村正彦、幹事長―二階俊博、総務会長―細田博之。政調会長―茂木敏充、選対委員長―古屋圭司、国対委員長―竹下亘

・小池百合子東京都知事就任(2016.8.2)

東京都知事選挙で当選した元防衛相の小池百合子氏が、2日、初めての女性都知事として就任しました。
小池氏は、2日初登庁し、職員への訓示で、「まず都政の透明化、情報公開で都政への信頼を回復したい。なによりも都民ファーストに徹していただきたい」の述べ、政治とカネの問題で2代続けて都知事が任期途中で退任したことから、都政の改革を強調しました。
31日行われた東京都知事選挙で、小池百合子氏=64歳は、無所属で、政党の枠を超えて幅広い有権者の支持を得て、無所属で自民、公明などが推薦した元総務相の増田寛也氏=64歳や無所属で民進、共産などが推薦したジャーナリストの鳥越俊太郎氏=76歳などを破って当選を果たしたものです。
開票結果は、小池氏が、およそ291万票、増田氏がおよそ179万票、鳥越氏がおよそ134万票で、小池氏は、増田氏を110万票余り引き離して当選しました。
投票率は、59.73%で、前回2年前の投票率を13.59%上回りました。
今後の都政の課題としては、待機児童対策や介護問題、首都直下地震の対応、2020年のオリンピック・パラリンピックの費用負担や準備態勢などが山積していて、小池新都知事は、これらの問題と取り組むことになります。

・ニュースの用語解説

小池百合子氏は、1952年兵庫県生まれで64歳。エジプトのカイロ大学を卒業後、テレビのニュースキャスターなどを経て、1992年の参議院選挙で当時の日本新党から立候補して初当選、翌1993年衆議院議員に転じ、今回東京都知事選挙に立候補するまで8年間連続で衆議院議員をつとめました。この間、日本新党から新進党、自由党、保守党を経て、2002年自民党入りし、2003年小泉第2次改造内閣で環境相として初入閣し、地球温暖化対策を進めるため、「クールビズ」の旗振り役をつとめました。2007年第1次安倍内閣で防衛相に就任し、防衛庁時代を含めて女性で初めて防衛省のトップに立ちました。2010年には、女性初の自民党3役として総務会長に就任しました。2016年8月初の女性都知事として就任。

(b)日本の経済、貿易

・政府、28兆円の経済対策決定(2016.8.2)

政府は、2日事業規模が28兆円余りとなる新たな経済対策を閣議決定しました。
それによりますと、国内経済は、個人消費や民間投資が力強さを欠き、世界経済も減速するリスクがあるとしたうえで、内需を下支えするとともに、「未来への投資」の加速を目的とする総合的かつ大胆な経済対策を講じるとしています。
対策では、子育て支援や介護の充実など「一億総活躍社会」の実現に向けた政策は、3兆5000億円程度で、保育士や介護職員の給与の引き上げ、返済のいらない給付型奨学金の創設、低所得者1人あたり1万5000円の給付などを行うことになっています。
インフラ整備は、10兆7000億円程度で、リニア中央新幹線の整備を最大8年前倒し、外国人観光客を増やすために大型クルーズ船が利用できる港の建設などに使うことになっています。
さらに、英国のEU=欧州連合からの離脱の伴うリスクに備え、中小企業に対する融資の拡充などに10兆9000億円程度、熊本地震や東日本大震災からの復興などに3兆円程度を割り当てています。
経済対策の事業規模は、28兆1000億円程度となります。このうち国と地方の財政支出は、7兆5000億円程度で、国の支出が6兆2000億円で、複数年度の執行になります。それに、国が低い金利で資金を供給する財政投融資が6兆円程度で、これらを合わせた財政措置は、13兆5000億円程度になっています。
政府は、今回の経済対策で、2016年度~2017年度のGDP=実質国内総生産を実質で1.3%押し上げることが見込まれるとしています。

・ニュースの用語解説

安倍首相は、7月の参議院選挙で、「アベノミクスを最大限ふかす」と繰り返し有権者にアピールしてきたこともあって、今回事業規模28兆円を超える新たな経済政策を組み、「未来への投資を大胆に行う力強い経済対策をまとめることができた」と述べました。また、麻生財務相と黒田日銀総裁が「アベノミクスの加速化に一体となって取り組む」と述べ、連携を強化していくこともアピールしました。しかし、今回の経済対策では、従来型の公共事業がずらりと並び、一億総活躍プランの財源は明示されないままで、その効果に疑問視する見方も出ていますし、市場の反応もよくない状態です。

(c)日本の社会

・伊方原発3号機が再稼働(2016.8.11)

愛媛県にある四国電力の伊方原子力発電所の3号機が、11日再稼働しました。
伊方原発3号機が稼働するのは、2011年3月東京電力の福島第1原発の事故後の1か月後に定期検査に入って以来5年4か月ぶりで、原発事故を受けて2013年に作られた新しい規制基準の審査に昨年合格し、再稼働の前に必要な検査が行われてきました。
新しい規制基準の下で再稼働した原発は、鹿児島県にある九州電力の川内原発の1号機と2号機と福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機に次いで3か所5機目目です。このうち高浜原発の3号機と4号機は、裁判所の運転停止を命じる仮処分の決定を受けて現在停止しています。

・ポケモンGO大流行(2016.7.22)

スマートフォンゲームの「ポケモンGO」は、7月6日アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドで先行配信され、日本でも7月22日に配信開始され、現在54か国で配信され、大流行です。運営しているのは、アメリカのナイアンティックというゲーム会社で、日本の任天堂(京都)とその関連会社のポケモン(東京)もいっしょに企画したものです。このゲームは、街を歩いてポケモンを捕まえ、「図鑑」を完成させるもので、GPS=全地球測位システムの位置情報やカメラのモニター機能を使い、現実の風景にポケモンの合成映像を出すことができるのです。AR=拡張現実と呼ばれる技術を使って、街中に出現したように感じるのです。
しかし、「歩きスマホ」や運転中のプレーは、事故のつながる恐れがあるとして、政府、地方自治体、警察、鉄道会社などは注意をよびかけています。

(d)国際情勢

・国連安保理、南スーダンのPKOに4000人追加派遣、任期4か月延長決議(2016.8.12)

国連安全保障理事会は、12日日本の自衛隊も参加しているアフリカの南スーダンのPKO=国連平和維持活動の部隊におよそ4000人を追加派遣して最大1万7000人に増強し、その任期を12月15日まで4か月延長することを決議しました。
南スーダンでは、停戦合意後も政府軍と反政府武装勢力の間で武力衝突が繰り返され、治安がひどく悪化し、先月PKO要員が駐屯している国連施設が襲撃され、死傷者をだしました。アメリカ、イギリスなどは、南スーダンに対し、武器禁輸を科すことを模索しましたが、中国やロシアなどが反対し、部隊の追加派遣で妥協したと伝えられています。

・トルコ・ロシア首脳会談、関係正常化で合意(2016.8.9)

トルコのエルドアン大統領は、9日ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、昨年11月にトルコ軍機がロシア軍機を撃墜したことで断絶状態となっていた両国関係を全面的に回復させることで合意しました。
会談は、ロシアの西部サクトペテルブルクで行われ、会談後、プーチン大統領は、事件後に発動したトルコに対する経済制裁を段階的に解除する考えを明らかにしました。エルドアン大統領は、軍事やエネルギーの分野で協力していく方針を示しました。
会談では、両首脳は、ロシア製「アックユ原発」の建設再開やトルコを経由して南欧にロシア産天然ガスを輸出するパイプライン「トルコ・ストリーム」計画を実現させる方針を確認しました。
このほか、内戦が続くシリア情勢をめぐって、ロシアはアサド政権を擁護し、トルコは逆にアサド政権の退陣を求め、立場が異なりますが、プーチン大統領は、「受け入れ可能な共通の解決策を見出す」と述べ、解決に向けて協力していくことを確認しました。

・ニュースの用語解説

トルコとロシアが関係修復に動いた理由には、欧米との関係と国内の経済事情があります。トルコは、先月のクーデター未遂事件のあと反政府勢力に対する大規模な取り締まりを行い欧米諸国から強権的だと批判され、ロシアは、ウクライナ問題で欧米諸国とは対立が続いており、両国の接近によって欧米諸国をけん制する思惑があるものとみられます。さらに、ロシアは、ウクライナ問題で欧米諸国からの経済制裁で経済情勢が悪化しており、トルコは、低迷する国内経済の立て直しが急務で、ロシアの経済制裁解除が望ましいことから、両国の経済協力で思惑が一致したものとみられます。

・タイの観光地などで爆発、4人死亡、34人けが(2016.8.11-12)

タイの観光地ホアヒンやプーケットなど5か所で、11日から12日にかけて爆発が相次ぎ、あわせて4人が死亡し、外国人観光客を含む34人がけがをしました。
12日はタイ王妃の誕生日を祝う祝日で、爆発は、王室の宮殿があり保養地でもあるタイ中部のホアヒンや南部のリゾート地プーケットなどで起こったもので、タイ警察は、記者会見し、すでに複数の容疑者を拘束し、事情を聴いているほか、監視カメラに写っていたほかの容疑者についても行方を追っているということです。また、爆発物のタイプなどがタイ南部のイスラム系武装勢力の手口と似ていることも明らかにし。事件の背後関係を調べているということです。

・リオデジャネイロ・オリンピック開幕(2016.8.5)

第31回夏季オリンピック競技会リオデジャネイロ大会が、5日開幕しました。今回の大会は、南米で初の開催で、史上最多の205の国と地域から1万人以上が参加し、21日までの17日間、28競技の306種目で熱戦が繰り広げられます。
開会式は、市内のマラカナン競技場で行われ、弾劾手続きで停職中のルセフ大統領は欠席し、テメル大統領代行が開会を宣言しました。会場では、サンバのリズムが響き渡り、華やかなムードの中、各国の選手団が入場行進しました。

3日IOC=国際オリンピック委員会の総会がリオデジャネイロで開かれ、2020年東京オリンピックの追加種目として、野球/ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5競技が正式に決定しました。

・イチロー、米大リーグ・3000本安打達成(2016.8.7)

アメリカ大リーグ・マーリンズのイチロー外野手=鈴木一朗42歳は、7日コロラド州でんばーでのロッキーズ戦で3塁打を放ち、大リーグ通算3000安打を達成しました。イチロー選手は、2001年大リーグでの初安打から、16年目でこの偉業を成し遂げたものです。大リーグでこの記録を達成したのは過去29人で、イチロー選手は30人目、日本人では史上初めてです。6月には、イチロー選手は、日米通算4257本目の安打を放ち、参考記録ですが、ピート・ローズが持つ大リーグ最多4256安打を抜いています。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

19.時事問題の基礎入門講座(2016.7.9の講座のテキスト)(最新版) [2016.7.9の講座のテキスト]

19. 時事問題の基礎入門講座(2016.7.9の講座のテキスト)

(a)日本の政治、外交、防衛

・参議院選挙の投開票(2016.7.10)

7月10日は、第24回参議院選挙の投開票が行われます。
参議院議員は、任期が6年で、3年ごとに定数242人のうち半数の121人が改選されます。今回の選挙は、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げて行われる初めての国政選挙です。
改選議席数は、選挙区73、比例代表48の合計121で、立候補者は、389人です。
焦点は、与党の自民、公明両党が目標としている改選議席数の過半数の61議席を獲得できるかどうか、さらには、与党など憲法改正を目指す勢力で、改正の発議に必要な参議院全体の3分の2にあたる162議席を獲得するために、今回の改選で78議席を勝ち取ることができるかどうかです。
選挙戦では、安倍政権の経済政策であるアベノミックスの是非、それに憲法改正や安全保障のあり方などをめぐって激しい論戦がかわされています。

・ニュースの用語解説

憲法改正
日本国憲法は、1946年公布、1947年施行されて以来、一度も改正されていません。憲法改正は、衆議院100人以上、参議院50人以上の議員の賛成で原案が発議され、両院それぞれの本会議で総議員の3分の2以上の賛成で可決して、国会が国民に憲法改正を発議し、発議の日から60~180日に国民投票(投票権は18歳以上)を行い、有効投票の過半数の賛成を得て承認されます。
憲法改正をめぐる動きについては、2000年衆参両院に憲法調査会が設立され、国会議員による憲法のあり方をめぐる話し合いが始まっていますし、2007年第1次安倍内閣の時、憲法改正のための国民投票法が成立しています。2012年第2次安倍内閣が成立、憲法改正を目標に掲げています。
安倍首相は、6月21日、日本記者クラブ主催の与野党9党による党首討論会で、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の勢力を参議院選挙後の衆参両院の憲法調査会の議論を通じて形成したいという考えを表明しました。これに対して民進党の岡田代表は、安倍政権下で憲法改正の議論を進めることに慎重な考えを示し、共産党の志位委員長も安倍政権による憲法改正に反対を表明しました。

・日米、日米地位協定における米軍属の範囲限定で合意(2016.7.5)

沖縄県におけるアメリカ軍の軍属による日本人女性の暴行殺害事件を受けて、日本とアメリカ両政府は、日米地位協定の対象となる軍属の範囲を明確に定めることで合意しました。
これは、岸田外相と中谷防衛相、それにアメリカのケネディ駐日大使と在日アメリカ軍のドーラン司令官が、5日東京で会談し、その事件をきっかけに沖縄県で高まっている反基地感情を考慮し、共同発表として合意を取りまとめたものです。
軍属は、日米地位協定では、「アメリカ国籍を有する文民で、在日アメリカ軍に雇用され、勤務し、または、随伴するもの」とだけ規定していますが、今回の共同発表では、軍属の範囲を4種類に例示し、①アメリカ政府の予算で雇用された文民②アメリカ軍が運航する船舶および航空機の乗組員③アメリカ軍の公式目的で日本に滞在するアメリカ政府の雇用者④アメリカ軍と契約する民間企業の技術アドバイザーやコンサルタントとしています。特に、技術アドバイザーやコンサルタントについては、高度な技術や知識を持ち、在日アメリカ軍の任務に不可欠な者としています。
この日米合意の詳細については、今後数か月間で協議を完了する予定だということです。
なお、アメリカ軍の軍属が起訴された今回の女性暴行殺害事件は、公務外の犯罪で身柄が日本側にあったために、日米地位協定が沖縄県警の捜査の障害になることはなかったといわれています。

・ ニュースの用語解説

6月9日、沖縄のアメリカ軍の軍属の男が日本人女性の遺体を遺棄したとして逮捕された事件で、沖縄県警は、殺人と強姦致死の疑いで、その男を再逮捕しました。
再逮捕されたのは、アメリカ海兵隊の元隊員で嘉手納基地で働く軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者32歳です。
沖縄県警によりますと、シンザト容疑者は、4月下旬、会社員の女性20歳に対し、頭を棒で殴って叢に連れ込み、刃物で刺すなどして殺害したとして、殺人の疑いに加え、乱暴しようとして死なせた疑いがもたれています。シンザト容疑者は、5月19日、女性の遺体を雑木林に遺棄した疑いで逮捕され、当初は、殺害をほのめかす供述をしていましたが、その後は、黙秘しているということです。

5月25日、安倍首相は、G7=主要7か国首脳会議=伊勢志摩サミットの開幕を前に、オバマ大統領と日米首脳会談を行い、沖縄の女性殺害事件を中心に話し合いが行われました。
両首脳が、会談のあと、共同記者会見で明らかにしたところによりますと、安倍首相は、この事件について、強く抗議し、実効性のある再発防止策を講じるよう求めたのに対し、オバマ大統領は、哀悼と遺憾の意を表し、日本側の捜査に全面的に協力する意向を表明しました。
そして、両首脳は、事件の全容解明と日米地位協定の運用の改善などに協力して取り組み、信頼回復に努めていくことで一致しました。

6月19日、沖縄県では、4月に20歳の日本人女性が殺害され、アメリカ軍の元海兵隊員で軍属の男が逮捕された事件を受け、大規模な抗議集会が那覇市で開かれ、沖縄からのアメリカ海兵隊の撤退などを求める決議を採択しました。
この集会は、沖縄県の翁長知事を支える沖縄県議会の与党会派の社民党、共産党、地域政党の沖縄社会大衆党、それに市民グループなどで作る団体の主催で開かれ、主催者の発表では、6万5000人が参加しました。
翁長知事が挨拶に立ち、「政府は、県民の怒りが限界に達しつつあること、これ以上基地負担に沖縄県民の犠牲は許されないことを理解すべきだ。沖縄県民の先頭に立って、日米地位協定の抜本的な見直しや新辺野古基地建設の阻止などに取り組んでいく不退転の決意を表明する」と述べました。
集会では、最後に、沖縄からのアメリカ海兵隊の撤退や県内移設によらない普天間基地の閉鎖・撤去などを要求する決議を採択しました。
集会には、県議会の会派のうち自民党と公明党は、主張の分かれる政治テーマを掲げるのではなく、追悼や事件への抗議に絞るべきだと主張して、参加しませんでした。

(b)日本の経済、貿易

・長期金利、20年国債初のマイナス、円高株安(2016.7.6)

世界経済の先行き懸念から、6日の東京市場で、比較的安全とされる国債と円に資金が集中し、債券市場では、新発20年物国債利回りが初のマイナスになり、為替市場では、1ドル=100円台をつけ、6月24日以来の円高水準になりました。
6日の東京債券市場では、長期金利の代表的な指標である満期10年の新発国債の流通利回りが一時、前日より0.030%幅低い(価格は上昇)マイナス0.285%をつけ、過去最低を更新しました。満期20年の国債の利回りも一時、マイナス0.005%と初めてマイナスとなりました。
市場関係者は、「イギリスの国民投票が行われて以降、世界経済の不透明感が高まっているとして、日本だけでなく、アメリカやドイツなどでも、国債が買われる動きが強まっている」と話しています。
一方、6日の東京外国為替市場では、円相場が、6月24日イギリスの国民投票でEU=欧州連合からの離脱が明らかになって以来、1ドル=100円台と円高が進みました。6日の東京株式市場では、企業業績への悪化懸念から下げ幅が一時500円を超えました。

・ニュースの用語解説

長期金利は、1年を超える預金・債券などに適用される金利のことで、日本では、新発10年物国債の流通利回りが代表的な指標とされ、他の長期金利に影響を与えます。短期金利が、日銀など中央銀行の金融政策の影響を直接的に受けるのに対し、長金利は、短期金利の影響を受けながら、景気やインフレ動向に関する予測を反映した長期資金の需給によって市場で決定されます。
新発10年国債利回りは、国が期間10年の借金をするときに発行する債券(国債)の流通利回りで、通常、債券市場の需給関係で決まり、国債の買い手が少なくなれば、価格は下落して利回りは上昇する一方で、逆に買い手が増えれば、価格は上昇して、利回りは下落することになります。

(c)日本の社会

・65歳以上の人口の割合、過去最高(2016.6.29)

日本の人口に占める65歳以上の割合が、26.7%と過去最高になりました。
これは、総務省が29日発表した昨年の国勢調査の速報値で明らかになったもので、日本の65歳以上の人口は、3342万2000人で、人口に占める割合は、2010年の前回の調査より3.7%多い26.7%でした。これは、1920年に調査を開始して以来初めて25%を上回り、過去最高になりました。4人に1人が高齢者ということになります。
一方、15歳未満の人口は、1586万4000人で、全体の12.7%で、過去最低でした。調査開始以来すべての都道府県で、初めて65歳以上の割合が、15歳未満を上回り、少子高齢化が一層進んでいることを浮き彫りにしています。

・ニュースの用語解説

65歳以上の割合の26.7%は、イタリアの22.4%、ドイツの21.2%を上回り、主要国の中で最も高い数字です。
都道府県別では、高い順に、秋田33.5%、高知32.9%、島根32.6%で、低い順では、沖縄19.7%、東京22.9%、愛知23.8%となっています。

(d)国際情勢

・バングラデシュでテロ、日本人7人を含む20人死亡(2016.7.1~2)

バングラデシュの首都ダッカで、7月1日、武装したグループが、飲食店を襲い、外国人の客などを人質にとって立てこもった事件で、日本人7人を含む20人が死亡し、日本人1人を含む13人が救出されました。
犠牲者の多くは、外国人で、イタリア人9人、日本人7人、アメリカ人1人、インドにン1人です。日本人の犠牲者は、男性5人、女性2人で、いずれもJICA=国際協力機構のプロジェクトに関わっていました。
事件発生から10時間余りたった2日、治安部隊が店内に突入し、激しい銃撃戦の末、武装グループのうち6人を射殺し、1人を拘束したということです。
一方、過激派組織IS=「イスラム国」のバングラデシュ支部を名乗る組織が、インターネット上で、犯行を認める声明を発表しました。
声明の信ぴょう性は確認されていませんが、捜査当局は、武装グループの背後関係や犯行の動機などについて調べを進めています。
事件現場は、ダッカの中心部で、大使館や外資系企業のオフィスが多く、高級住宅街や商業施設もあるグルシャン地区で、武装グループが立てこもった飲食店は、外交官など外国人も頻繁に利用する人気店でした。

・ニュースの用語解説

バングラデシュは、1947年にイギリスからインド、パキスタンが分離独立した際に、パキスタンの一部(東パキスタン)となり、1971年第3次印パ戦争を経て、バングラデシュとして独立しました。人口は、1億5940万人で、イスラム教徒が9割を占めています。ベンガル人がほとんどで公用語もベンガル語。面積は、日本の約4割にあたる14万7000平方キロ。在留邦人は、985人。日本企業240社が進出し、ODA(政府開発援助)関連事業が多い。
イスラム過激派によるとみられるテロ事件で、2013年から少なくとも計20人が殺害されていて、2015年9月には、今回の事件現場となったグルシャン地区で、イタリア人の援助機関のスタッフが、翌10月には、北西部で日本人男性が殺害され、外国人への攻撃が懸念されるようになっていました。

・イラクでテロ、292人死亡(2016.7.8)

イラクの首都バグダッドで3日爆弾テロがあり、7日までに292人が死亡し、およそ200人がけがをしたということで、過激派組織IS=「イスラム国」が犯行声明をだしています。
この事件は、バグダッドの中心部でイスラム教シーア派が多く住む地区の繁華街で、イスラム教のラマダン=断食月明けの祝祭を控え、買い物客でにぎわっている中で起きました。大量の爆弾を積んだトラックが爆発し、子どもたちを含む292人が死亡し、およそ200人がけがをしているということです。
これについて、過激派組織IS=「イスラム国」が犯行声明を発表し、イスラム教シーアを標的にしたと主張しています。
イラク政府は、6月下旬、2年以上にわたってISが支配していた、バグダッドの西50キロの所にある交通の要衝ファルージャを奪還したのに続き、ISがイラク最大の拠点とするモスルの奪還を早期に成し遂げると強調しています。
しかし、今回の爆弾テロ事件のあと現場を訪れたアバディ首相に対し、集まった人たちからテロを防止できない政府を非難する声が一斉に上がるなど政府への不信感が高まっています。

・ニュースの用語解説

イスラム国は、中東の過激派組織で、シリア北部からイラク中部にかけての領域を占拠し、2014年6月国家の樹立を宣言して「Islamic State(イスラム国)」と自称しています。国際社会は、国家としては承認しておらず、各国政府は、ISIL(=Islamic State of Iraq and the Levant)とか、ISなどと呼んでいます。ISは、イスラム教を厳格に適用しているといわれ、スンニ派によるイスラム国家を武力の行使も辞さずに実現しようとしています。
ISは、6月にイスラム教のラマダン=断食月中のテロ攻撃を世界中の支持者に呼びかけました。ラマダン入りに先立つ6月の声明で、「昼夜を問わず、今いる場所で、十字軍を恐怖に陥れよ」と訴え、テロを先導した」と述べています。

・英国民投票、EU(欧州連合)からの離脱決める、保守党党首選挙でメイ内相リード(2016.7.8)

イギリスの国民投票でEU=欧州連合に残留を主張して敗北し辞意を表明したキャメロン首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙に、現職の閣僚ら5人が立候補を届け出ました。
イギリスでは、6月23日国民投票が行われ、EUからの離脱支持が51.9%、残留支持が48.1%で、離脱派が勝利をおさめ、残留を訴えていたキャメロン首相は、24日辞意を表明しました。
キャメロン首相の後任を選ぶ与党・保守党の党首選挙の立候補受け付けは、30日締め切られ、党首選挙がスタートしました。立候補したのは、離脱派のマイケル・ゴーブ司法相、残留派のテリーザ・メイ内相らあわせて5人です。離脱派の運動を主導したボリス・ジョンソン下院議員は、最有力とみられていましたが、30日になって突然立候補を断念すると発表しました。
7日329人の下院議員による2回目の投票が行われ、メイ内相が全体の60%にあたる199票を獲得し、これに続いて、離脱派のアンドレア・レッドサム・エネルギー担当相が84票を獲得しました。
新しい保守党の党首は、議員や党員の投票を経て、9月9日までに決まる見通しで、保守党は下院で過半数の議席を占めており、次の党首が新しい首相に選ばれることになります。そして、エリザベス女王に首相に任命されて就任し、EUに離脱を正式に通知し、EUとの難しい交渉にあたることになります。
一方、イギリスがEUからの離脱を決めた後初めてのEUの首脳会議が、6月28日と29日ベルギーの首都ブリュッセルで開かれ、最終日の29日、イギリスを除く27か国の首脳は、声明を発表し、イギリスに対し、EU域内の移民の受け入れを含む「移動の自由」を受け入れない限り、EU市場への自由な参加は認められないという厳しい姿勢で一致しました。

・ニュースの用語解説

イギリスの保守党党首選挙の日程
6月30日 保守党党首選の立候補締め切り
7月5日 下院議員の予備投票開始(週2回の投票で、最少得票者を1人ずつふるい落とし、2人に絞り込む
7~8月 決選投票の2候補が国内各地を遊説
9月9日 党員による郵便投票で決戦投票、新党首選出
9月16日 イギリス以外のEU27か国首脳会合
10月2~5日 保守党の党大会

EUのリスボン条約50条
1. いかなる加盟国も、その憲法上の要件に従い、EUからの脱退を決定することができる。
2. 脱退を決定した加盟国は、その意思を欧州理事会に通知する。EUは、その国と交渉を行い、その国の脱退に関する取り決めを定める協定を締結する。この協定は、欧州議会の同意を得た後に、理事会により特定多数決によって締結される。(特定多数決は、投票に参加する理事会構成員の少なくとも72%以上で、投票に参加する加盟国の65以上。)
3. 脱退協定が発効した日に、または、それが存在しない場合には、欧州理事会がその加盟国と合意したうえで、この期間の延長を全会一致により決定しない限り、2年後に。その国への適用を終了する。

・北朝鮮のキム・ジョンウン、国務委員長に(2016.6.29)

北朝鮮の最高人民会議は、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が、国家のトップにあたる国務委員長に就任することを決めました。キム・ジョンウン氏は、5月党大会で、党のトップの委員長に就任しており、今回の決定によって、党と国家の最高のポストを掌握し、求心力を高めるねらいがあるものとみられています。
北朝鮮の最高人民会議は、29日、憲法を改正し、これまで国家機関を統括してきた国防委員会を改組して国務委員会を新設し、国防委員会第1委員長を国務委員会委員長にすることを決めました。これによって、国防委員会第1委員長だったキム・ジョンウン氏が、国家のトッであるの国務委員会委員長に就任することになりました。
キム・ジョンウン氏が今回国防委員会を改組し国務委員会を新設したのは、父親のキム・ジョンイル(金正日)の軍を最優先する先軍政治から党や国家の機構を重視する新しい体制の確立の意図を内外にアピールするねらいがあるものとみられています。

・ニュースの用語解説

2016年5月、北朝鮮で36年ぶりに朝鮮労働党大会が開かれ、最高指導者のキム・ジョンウン(金正恩)第1書記が新設のポストの党委員長に就任するなど新しい党指導部が決まりました。このほか、党の中核をなす政治局常務委員には、キム・ジョンウン(金正恩)委員長が再任され、現職のキム・ヨンナム(金永南)最高人民会議常務委員長とファン・ビョンソ(黄炳瑞)軍総政治局長に加えて、新たに経済部門を統括するパク・ポンジュ(朴奉珠)首相と長く青年組織のトップをつとめたチェ・リョンヘ(崔竜海)党書記が選ばれ、3人体制から5人体制になりました。党大会では、核開発と経済再建を同時に進める「並進路線」を盛り込んだ党規約の改正、「核兵器の小型化、多種化を高い水準で実現し、核戦力を質・量的に強化して「東方の核大国」に輝かせていく」と擦る決定書なども採択しました。
キム・ジョンウン(金正恩)氏としては、5月に最高指導機関である朝鮮労働党で新たに設けた最高位のポストの党委員長に就任し、さらに、今回の国務委員長就任によって、党と国家両方の最高のポストを手中に収め、北朝鮮の最高指導者としての地位を強化し、自らの新しい体制のスタートを内外に誇示するねらいがあるものとみられています。

・米韓、ミサイル配備決定、中国、反発(2016.7.8)

韓国国防部と在韓米軍は、8日、在韓米軍へのTHAAD(サード)=高高度迎撃ミサイルシステムの配備を決定したと発表しました。
米韓両政府は、北朝鮮による核実験と弾道ミサイル発射が、アジア太平洋地域の安全保障にとって重大な脅威になっていると指摘し、北朝鮮の脅威に対応するため、米韓同盟のミサイル防御態勢を向上させる措置だとしました。そして、朝鮮半島のTHAADは、いかなる第3国に向けられず、北朝鮮の核・ミサイルの脅威だけに運用されるとし、中国やロシアに向けて運用しない考えを強調しました。
しかし、中国外務省は、8日、声明を発表し、「中国や関係国の明確な反対を顧みずにTHAADの配備を決めた」と非難し、「強烈な不満と断固反対」を表明しました。

・ニュースの用語解説

THAADミサイルは、高高度防衛ミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile)のことで、アメリカ陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイル・システムです。 THAADは、敵の弾道ミサイルが、航程が最後の段階に差し掛かり、大気圏に再突入している段階で、ミサイル防衛で、迎撃・撃破するために開発されたものです。、

・大西さんら3人の宇宙飛行士、ソユーズで国際宇宙ステーションへ(2016.7.7)

大西さんら3人の宇宙飛行士が乗り込んだロシアの宇宙船「ソユーズ」が、7日、中央アジアのカザフスタンから打ち上げられ、地球を回る軌道に入って、打ち上げは成功しました。
ソユーズには、ロシアのアナトーリ・イバニシン船長、アメリカのキャスリーン・ルビンズさん、それに日本の大西卓哉さんの3人の宇宙飛行士が乗り込んでおり、打ち上げのおよそ50時間後、国際宇宙ステーションとドッキングし、国際ステーションに移って、およそ4か月滞在し、さまざまな実験や観測を行うことになっています。
大西さんは、元全日空の旅客機のパイロットで、日本人11人目の宇宙飛行士で、国際宇宙ステーションに長期滞在するのは6人目になります。

・ニュースの用語解説

国際宇宙ステーション(ISS=International Space Station)は、アメリカ、ロシア、日本、カナダ及び欧州宇宙機関(ESA)が協力して運用している宇宙ステーションです。地球及び宇宙の観測、宇宙環境を利用した様々な研究や実験を行うための巨大な有人施設です。地上からおよそ400km上空を秒速およそ7.7kmで飛行し、地球をおよそ90分で1周、1日でおよそ16周しています。
1999年から軌道上での組み立てが開始され、2011年完成しました。当初運用期間は、2016年までの予定でしたが、各国は、少なくとも2024年までは運用を継続する方針を決めています。


・アメリカで警察官銃撃事件、警察官5人死亡(2016.7.9)

アメリカで、黒人男性が相次いで警察に射殺される中、テキサス州ダラスで警察官5人が銃撃され死亡する事件が起き、容疑者の黒人男性は、白人警察官への怒りをあらわにしていたということで、アメリカ社会に残る人種問題が再燃しているとみられています。
アメリカでは、5日から2日連続で黒人の男性が警察官に射殺される事件が起き、7日にはテキサス州ダラスで警察に対する抗議デモがおこなわれましたが、そのさなかに警察官12人が銃で撃たれ、このうち5人が死亡しました。
警察によりますと、容疑者の男は、銃撃戦の中で交渉にあたった警察官に「黒人男性が死亡した一連の事件に怒りを覚え、特に白人の警察官を殺害したかった」と話していたということです。
警察に対する抗議デモは、7日、各地に拡大し、南部アトランタ、中西部シカゴ、東部ニューヨーク、首都ワシントンなどで行われました。

・ニュースの用語解説

今回の一連の事件は、
7月5日―南部ルイジアナ州バトンルージュで、2人の白人警察官が黒人男性を射殺、地面に押さえつけた状態で撃ったことを示す映像がインターネット上で投稿されました。
7月6日―中西部ミネソタ州ファルコンハオツで、警察官が黒人男性を射殺、自動車のライトが壊れているとして停車を求められ、免許証などを取り出そうとした際に発砲。助手席にいた女性が射殺現場の状況を撮影し、ネットで公開。
7月7日―テキサス州ダラスで、黒人射殺事件に抗議するデモの最中、警察官5人が狙撃され死亡
アメリカでは、警察の不当な扱いで黒人が犠牲となるたびに抗議デモが各地で行われ、報復とみられる警察官の射殺事件が起き、人種対立が深まることが懸念されています。












タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

18.時事問題の基礎入門講座(2016.6.11の講座のテキスト)改訂版 [2016.6.11の講座のテキスト]

18. 時事問題の基礎入門講座(2016.6.11のテキスト)改訂版

(a) 日本の政治・外交・防衛

・政府、接続水域航行で中国に抗議―2016.6.9

政府は、6月9日、中国海軍のフリゲート艦1隻が沖縄県の尖閣諸島の接続水域に入ったと発表し、ただちに中国政府に抗議しました。
接続水域というのは、領海の外側に離接する12カイリの海域のことで、中国海軍の艦船がこの水域を航行するのを確認したのは、初めてのことです。
政府の発表によりますと、中国海軍の軍艦は、9日午前0時50分ころ接続水域に入り、午前3時10分頃同水域を離れたのを海上自衛隊の護衛艦が確認したということです。
外務省は、午前2時頃中国の駐日大使を呼んで、今回の行為を「一方的に緊張を高める行為だ」として、同水域から直ちに出るよう抗議しました。
また、8日午後9時50分頃には、ロシア海軍の駆逐艦など3隻が、同水域に入り、9日午前3時5分頃離れたということですが、防衛省は、「ロシアは、尖閣諸島の領有を主張していない。中国と区別して対応していく」としています。
一方、中国国防省は、9日「釣魚島(尖閣諸島の中国名)と付属の島しょは、中国固有の領土であり、中国軍艦が自国の管轄海域で航行するのは合法だ」と述べています。
アメリカ国防総省は、9日、「日本政府から情報提供を受け、緊密に連絡を取り合っている」と述べています。

・ニュースの用語解説

接続水域(contiguous zone)というのは、沿岸から12カイリ(約22キロ)までが領海で、そのさらに外側12カイリ、沿岸から24カイリを接続水域といいます。領海は、領土や領海のように沿岸国の主権が及び、接続水域では、沿岸国が通関や出入国管理、衛生上の規制をすることが認められています。これらは、いずれも国連海洋条約で定められています。接続水域では、沿岸国の主権は及ばず、他国にも航行の自由が確保されています。沖縄県の尖閣諸島周辺では、2012年に日本が同諸島を国有化した直後から、中国の公船が接続水域を超え、領海侵入を繰り返しています。しかし、中国海軍の軍艦が接続水域を航行したのは、今回が初めてです。

・沖縄の米軍属の男、殺人などの疑いで再逮捕―2016.6.9

沖縄のアメリカ軍の軍属の男が日本人女性の遺体を遺棄したとして逮捕された事件で、沖縄県警は、6月9日、殺人と強姦致死の疑いで、その男を再逮捕しました。
再逮捕されたのは、アメリカ海兵隊の元隊員で嘉手納基地で働く軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者32歳です。
沖縄県警によりますと、シンザト容疑者は、4月下旬、会社員の女性20歳に対し、頭を棒で殴って叢に連れ込み、刃物で刺すなどして殺害したとして、殺人の疑いに加え、乱暴しようとして死なせた疑いがもたれています。シンザト容疑者は、5月19日、女性の遺体を雑木林に遺棄した疑いで逮捕され、当初は、殺害をほのめかす供述をしていましたが、その後は、黙秘しているということです。

・日米首脳会談、沖縄の事件中心に協議―2016.5.25

安倍首相は、5月25日、G7=主要7か国主相会議=伊勢志摩サミットの開幕を前にオバマ大統領と日米首脳会談を行いました。
両首脳が、会談のあと、共同記者会見で明らかにしたところによると、安倍首相は、沖縄県でアメリカ国籍の軍属の男が日本人女性の死体を遺棄したとして逮捕された事件について、強く抗議し、実効性のある再発防止策を講じるよう求めたのに対し、オバマ大統領は、哀悼と遺憾の意を表し、日本側の捜査に全面的に協力する意向を表明しました。
そして、両首脳は、事件の全容解明と日米地位協定の運用の改善などに協力して取り組み、信頼回復に努めていくことで一致しました。
また、両首脳は、伊勢志摩サミットの成功に向けて、世界経済などの主要なテーマをめぐって緊密に協力していくことを確認しました。
沖縄県の翁長知事は、25日、今回の日米首脳会談について、記者団に、「安倍首相が、オバマ大統領と直接会話したいという私の希望や日米地位協定の見直しに言及しなかったことは、大変残念だ」と述べました。
事件の軍属の男がつとめていた嘉手納基地の前では、およそ4000人の人たちが、25日集会を開き、今回の事件に抗議するとともに、すべてのアメリカ軍基地の撤去を求めました。
この後も、沖縄では、抗議行動が続いており、6月19日には、大規模な集会を開き、事件に抗議し、沖縄のアメリカ軍基地の撤去を求めることにしています。

・ニュースの用語解説

沖縄県警の発表によりますと、シンザト・ケネフ・フランクリン容疑者32歳は、元海兵隊員で、空軍嘉手納基地に勤務していますが、4月28日から29日未明にかけて、沖縄県うるま市の会社員島袋里奈さん20歳の遺体を雑木林に遺棄したとして、5月19日逮捕したものです。
沖縄県警は、付近の防犯カメラの映像や目撃情報から、シンザト容疑者の車がこの時間帯に付近を通っていたことをつきとめ、5月16日から任意の事情聴取を続け、使用車両の任意提出を受けて調べた結果、車から島袋さんのDNA型が検出されました。警察が、19日、雑木林で、島袋さんの白骨化した遺体を発見し、シンザト容疑者を逮捕したものです。
沖縄県警は、シンザト容疑者について、日米地位協定が定める「軍属」にあたると説明、事件は、「公務外」で起きたとし、日本の刑事手続きに従って送検するとしています。


・オバマ米大統領、広島訪問―2016.5.27

アメリカのオバマ大統領は、5月27日、アメリカの現職の大統領としては初めて被爆地・広島を訪問し、演説の中で、「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組む決意を表明しました。
オバマ大統領は、26日と27日開かれたG7主要7か国首脳会議=伊勢志摩サミットに出席した後、広島を訪れ、平和記念資料館を見学し、原爆慰霊碑に献花し、黙とうを捧げ、招待した広島と長崎の両市長や被爆者の人たちを前に所感を述べる演説をしました。
オバマ大統領は、この中で、広島に原爆が投下された8月6日の「記憶は消え去らない」と所感を述べ、「核兵器のない世界」への決意を表明しました。広島、長崎で亡くなった人々を含め、第2次世界大戦の全犠牲者を追悼し、戦争の惨禍を繰り返さないための誓いを新たにしました。
オバマ大統領は、「われわれは、核兵器を保有する恐怖の論理から脱する勇気を持ち、核兵器のない世界を追い求めなければならない。私が生きている間に実現しないかもしれないが、絶え間ない努力によって破滅を避けることができる」と述べ、核兵器の廃絶に向けて取り組む決意を示しました。
さらに、「われわれは、戦争についての考え方を変え、外交を通じて対立を避けるようにしなければならない」と述べ、「広島と長崎を核戦争の始まりとして記憶するのではなく、人類の道徳的な目覚めにしなければならない」と語り、被爆地の経験を伝え、核兵器が2度と使われないようにしなければならないと訴えました。
しかし、71年前にアメリカが原爆を投下したことに対する謝罪や原爆投下の是非については、言及しませんでした。

・ニュースの用語解説

アメリカのオバマ大統領は、2009年1月就任し、4月チェコのプラハで、「核兵器のない世界を目指す」と演説し、12月にはノーベル平和賞を受賞しています。
オバマ大統領は、2009年初めて日本を訪れた際、記者会見で「広島、長崎を将来訪れることができれば、非常に名誉なことだ」と述べていました。
しかし、オバマ大統領は、これまで3度日本を訪れていますが、いずれも被爆地訪問を見送っています。これは、アメリカ国内には、原爆投下によって戦争終結が早まり、多くのアメリカ人の命が救われたと正当化する主張が根強く存在し、被爆地訪問への慎重論があるためです。
オバマ政権下では、2010年当時のルース駐日大使が、アメリカ政府代表として初めて広島の平和記念式典に出席し、後任のケネディ大使も毎年式典に出席しています。今年7月には広島で開かれたG7=主要7か国外相会議に出席したケリー国務長官が、アメリカ政府の閣僚としては初めて平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花し、平和記念資料館(原爆資料館)を訪問しました。そして、「すべての人が広島を訪れるべきだ」と語り、オバマ大統領の広島訪問の下地を作ったといわれています。
今回は、オバマ大統領にとって、4度目の日本訪問で、ようやく広島訪問が実現しました。

・G7主要7か国首脳会議=伊勢志摩サミット閉幕―2016.5.27

三重県で開かれていたG7主要7か国首脳会議=伊勢志摩サミットは、5月27日、世界経済を支える金融、財政政策と構造改革の重要性をうたった首脳宣言を採択し、2日間にわたった会議を終えました。
首脳宣言は、最大のテーマだった世界経済について、「世界経済の回復は続いているが、成長は、引き続き穏やかで、ばらつきがあり、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっている」と指摘した上で、「新たな危機に陥ることを回避するするため、適時にすべての政策対応を行うことによって、現在の経済状況に対応するための努力を強化する」としています。そして、持続可能な均衡ある成長の達成に貢献するための対応策をまとめた「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」を打ち出し、「財政戦略を機動的に実施し、構造政策を果断に進めることに関し、G7が協力して取り組みを強化することの重要性に合意する」としています。
また、「3本の矢のアプローチ、すなわち相互補完的な財政・金融及び構造政策の重要な役割を再確認する」として、機動的な財政出動をはじめ金融政策、構造改革など、G7各国が状況に応じて政策を総動員して世界経済を支えていく姿勢を強調しています。
会議後、議長をつとめた安倍首相は、記者会見を開き、複数の経済指標について、「リーマン・ショック時の下落幅に匹敵する」などとして、世界経済の現状が2008年のリーマン・ショック前に似ているとの認識を示し、「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7は、その認識を共有し、強い危機感を共有した」と述べました。しかし、この認識については、G7の首脳間では、違いがあったと伝えられています。

・ニュースの用語解説

サミット主要国首脳会議は、1975年第1回は、フランスのパリ郊外のランブイエ城で開催、フランス、アメリカ、イギリス、西ドイツ、日本、イタリアが参加。1976年第2回からカナダが参加、1994年第20回からロシアが政治討議に参加、2003年第29回からすべてに参加しました。G8になりました。しかし、2014年第40回からウクライナ問題でロシアが排除され、G7になりました。今回は、日本開催で、5月26日と27日 第42回主要国首脳会議・伊勢志摩サミットが行われました。

・安倍首相、消費増税再延期を表明―2016.6.1

安倍首相は、6月1日、通常国会の閉幕を受けて記者会見し、2017年4月に予定していた消費税率8%から10%への引き上げを2019年10月まで2年半再延期することを正式に表明しました。同時に、夏の参議院選挙を6月22日公示、7月10日投票とする方針を示し、消費増税の再延期の判断については、参議院選挙で国民の信を問うと述べました。
消費増税の延期は、当初の2015年10月から1年半延ばした2014年11月の決定に続き2回目で、安倍首相は、その際に「再延期はない」と断言していたことについて、「これまでの約束と異なる判断だ。『公約違反ではないか』との批判を真摯に受け止める」と語りました。
安倍首相は、消費増税の再延期を判断した理由について、当初から延期するケースとして挙げていたリーマン・ショック級の事態は発生していないとする一方、「新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している」と説明し、世界経済が新たな危機に陥ることを回避するため、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだと判断した」と述べるとともに、このため、政策総動員が必要だと強調しました。
安倍首相は、消費増税を再延期しても「財政再建の旗は降ろさない」と述べ、基礎的財政収支の赤字を2020年度に黒字化する財政健全化の目標は堅持する考えを強調しました。
消費増税の再延期については、「国政選挙である参議院選挙を通し、国民の信を問う」とし、参議院選挙に合わせて衆議院選挙を実施する衆参同日選挙については、熊本地震への配慮などを理由に見送る意向を示しました。
安倍首相は、参議院選挙について、「目指すのは、自民、公明の連立与党で改選議席の過半数を獲得ることだ」と述べました。これは、改選議席数121のうち、自民、公明両党で61議席を目標とするというもので、現有議席の自民50議席、公明9議席を2議席上回ることになります。
7月の参議院選挙では、安倍首相の消費増税再延期の判断の是非やアベノミックス=安倍首相の経済政策の成否、集団的自衛権行使を認めた安全保障関連法が主要な争点になるものとみられています。さらに、憲法改正の国会発議に必要な定数の3分の2以上の議席を改憲勢力が確保できるかどうかも注目されています。

・ニュースの用語解説

消費税というのは、モノやサービスを取引する際にかかる税金のことで、実質的な負担者は、消費者ですが、小売店やメーカーといった事業者が実際には消費税を納めています。勤労世代など特定の人に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で幅広く負担しています。法人税や所得税に比べて、税収が景気動向に左右されにくく、安定財源の側面をもっています。
日本では、1989年4月に3%の消費税が、初めて導入されました。1997年4月に税率が5%に上がり、2014年4月には8%になりました。
2016年度の消費税収は、およそ17兆2000億円の見通しで、一般会計税収のおよそ3割を占めています。税率が8%上がったことで、消費税の税収規模は、およそ18兆円ある所得税に匹敵する規模になっています。
消費税が増税する理由は、高齢化で、社会保障費が増大しているためです。消費税の税収は、年金、介護、医療などの社会保障サービスや子育て支援に充てるのがルールになっています。税収が増えれば、サービスも拡充できることになります。
海外では、売り上げ税、付加価値税などと呼ばれ、社会保障が充実しているスウェーデンやデンマークは、25%と高率です。イギリスは、金融危機後の2009年に17.5%から15%に下げた後、20%に引き上げました。食料品などの税率を低くする軽減税率もあり、増税への反発もそれほど強くないといわれています。


(b)日本の経済・貿易

・三菱東京UFJ銀行、国債入札の特別資格返上を検討―2016.6.10

日本の最大手の銀行である三菱東京UFJ銀行が、国債の入札に関する特別資格を国に返す方向で検討していることが明らかになりました。
これは、小山田隆頭取が10日大阪での記者会見で明らかにしたもので、特別資格に一定額の落札額が義務付けられていることを念頭に、「マイナス金利化が進んでいる中で、落札義務をすべて履行するのは難しい環境だ」と述べました。この資格は、国債市場特別参加者といい、大量に発効される国債の安定消化をはかろうと国が大手の銀行や証券会社を対象に付与しているもので、国債を発行する財務省と意見交換できる利点がある一方、国債の入札ごとに発行予定額の4%以上の応札が義務づけられています。
日本銀行が1月末にマイナス金利政策の導入を決めた後、債券市場では幅広い年限の国債の利回りがマイナスに転じました。マイナス金利の国債を買い増して満期まで持ち続けると、損失が発生する状況になっています。
国債の主要な買い手である三菱東京UFJ銀行のような日本のメガバンクが、こうした資格を返すとすれば、初めてのことで、その他のメガバンクが追随する可能性もあり、今後国債購入を引き受ける金融機関が減れば、財務省の安定的な国債発行や日本銀行の金融緩和政策にも影響を及ぼす恐れがあると指摘されています。

・ニュースの用語解説

国債市場特別参加者(primary dealer)というのは、国債の大量発行が今後も続く中で、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上などを図ることを目的に、財務省が、2004年に導入した資格のことです。これは、欧米主要国におけるプライマリー・ディーラー制度を参考にしています。特別参加者の責任としては、全ての国債の入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の相応の応札をすることが定められています。特別参加者の資格としては、財務省が開催する特別参加者との会合に参加し、財務省と意見交換などを行うことができることになっています。現在、国債市場特別参加者は、22社です。

(c) 日本の社会

・「ニホニウム」元素周期表にー2016.6.8

日本の理化学研究所のチームが発見し、日本が初めて命名権を得た113番元素について、化学に関する国際機関は、名称案を「ニホニウム(Nihonium)」、元素記号案を「Nh」と発表しました。
これは、新元素発見を認定する国債純正・応用化学連合(IUPAC)が6月8日発表したもので、今後5か月間の意見募集を経て正式に決定し、元素周期表に掲載されることになっています。
物質の元になる元素のうち、九州大学の森田浩介教授を中心とする理化学研究所のチームが、12年前に埼玉県和光市にある大型の実験装置を使って人工的に作り出すことに成功した113番目の元素について、この国際機関は、昨年12月正式に元素として認定し、命名権を日本に与えました。これを受けて、理化学研究所のチームは、今年3月名称と元素記号の案を提出していましたが、今回日本の案通り認められたものです。

・ニュースの用語解説

物質の元になる元素は、原子番号1番の水素から、94番のプルトニウムまでが自然界に存在していますが、95番以降は、人工的に作りだされたもので、これまで118番まで報告されています。理化学研究所が作り出した113番元素のほかは、115番元素がロシアのモスクワにちなんだ「モスコビウム」、117番アメリカ・テネシー州にちなんだ「テネシン」118番が超重元素の研究者でロシアのユーリ・オガネシアン氏の名前にちなんだ「オガネソン」になっています。

(d) 国際情勢

・アメリカの大統領選挙 クリントン氏とトランプ氏の対決へー2016.6.8

11月のアメリカ大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と共和党の不動産王のドナルド・トランプ氏の対決が確実になりました。
これは、これまで行われてきた各州の予備選挙や党員集会で、共和党候補の指名争いでは、トランプ氏が早くも先月初めに勝利をおさめ、民主党候補の指名争いでは、クリントン氏が、6日勝利したためで、各党が7月に行う全国大会で、それぞれ代議員の投票で、その党の大統領候補に指名されることになります。
クリントン氏は、地元ニューヨーク州で演説し、「わえわれは、ついに歴史的な節目に到達した。アメリカの歴史上初めて女性が主要な政党の大統領候補になる」と述べ、勝利を宣言しました。そして、「トランプ氏の激しい気性は大統領にふさわしくない」と述べて、トランプ氏との戦いに強い意欲を示しました。
一方、共和党のトランプ氏も地元のニューヨーク州で演説し、「私は、アメリカの人々のために戦っていく。クリントン氏が大統領になれば、最悪だったオバマ政権の延長となってしまう」と述べ、共和党の候補として、8年ぶりの政権奪還に意欲を示しました。
クリントン氏もトランプ氏も知名度は高いのですが、アメリカ国民の好感度は極めて低く、それぞれの党内の分裂や反発を抱えながら、本選挙にのぞむことになります。
一方、オバマ大統領は、9日、インターネット上の動画で、次期大統領選挙で、クリントン氏を支持することを明らかにしました。

・ニュースの用語解説

アメリカの大統領選挙は、4年に1度行われます。アメリカの大統領選挙では、民主党と共和党が、それぞれ全米50州と首都のワシントンで予備選挙や党員集会を開き、どの大統領候補を支持するかをあらかじめ表明している代議員を選びます。過半数の代議員を確保した候補が7月の党大会でその党の大統領候補に指名され、11月の本選挙まで激しい選挙戦が繰り広げられます。
今年の投票は、11月8日に行われます。有権者は、実質的には、支持する候補者に投票しますが、形式的には、支持する候補者を表明した大統領選挙人を選びます。大統領選挙人は、計538人で、人口に応じて各州に割り当てられています。大半の州では、最多得票の候補者が選挙人全員を獲得する「総取り方式(winner-take-all)」をとっています。過半数の270人以上獲得した候補が大統領に当選することになります。
あとは、形式的なことになりますが、選ばれた大統領選挙人は、12月に各州の州都に集まり、大統領を選ぶ投票を行い、それらの票が、ワシントンの議会に送られ、来年1月に開票され、過半数の270人以上を獲得した候補が、1月20日に大統領に就任します。

クリントン氏とトランプ氏
民主党の大統領候補のクリントン氏は、1947年10月26日生まれ、68歳、学歴は、エール大学法科大学院修了、経歴は、弁護士、ファーストレディー、上院議員、国務長官。アメリカ史上初の女性大統領をねらっています。
共和党の大統領候補のトランプ氏は、1946年6月14日生まれ、69歳、学歴は、ペンシルベニア大学ウォートン校卒、経歴は、不動産開発・運営(ホテル、ゴルフ場、カジノなど)、「アメリカを再び偉大な国にする」と呼びかけ、過激な発言などで“トランプ旋風”を巻き起こしています。


・ペルー大統領選挙でクチンスキー元首相勝利―2016.6.10

ペルーの大統領選挙の決選投票で大接戦の末、ペドロ・クチンスキー元首相が、日系3世でフジモリ元大統領の長女のケイコ・フジモリ氏を破り、勝利を収めました。
ペルーの選挙管理当局が9日発表したところによりますと、開票率100%で、クチンスキー氏が約858万7000票で50.12%、ケイコ・フジモリ氏が約854万6000票で49.88%と、クチンスキー氏が、約4万1000票、0.24%上回っています。
クチンスキー氏は、77歳、エコノミストで、エネルギー鉱山相、経済財政相、首相をつとめ、ペルーの経済をプラス成長に導いたと評価されており、経済界や富裕層を中心に支持を得ていました。
ケイコ・フジモリ氏は、41歳で、大統領選挙は、2011年に続いて2度目の挑戦でした。父アルベルト・フジモリ氏は、1990年から10年間、大統領をつとめましたが、テロ撲滅や経済再建では功績をあげ、特に低所得層に人気がありながらも、人権侵害や汚職のイメージが根強いといわれています。決戦投票の焦点は、フジモリ政権時代の評価に絞られ、クチンスキー氏は、ケイコ・フジモリ氏を父親と重ね合わせて「民主主義への脅威」などと批判し、1回目の投票では、ケイコ・フジモリ氏の半分ほどの得票でしたが、決選投票でかろうじて当選を果たしたものです。ペルーの議会は一院制で130議席のうち、ケイコ・フジモリ氏の党が、73議席を占めているのに対し、クチンスキー氏の党は、18議席で、クチンスキー政権は、議会運営や政策の作成・実施などの面で、難しいかじ取りを迫られるものとみられています。







タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

17.時事問題の基礎入門講座(2016.5.14の講座のテキスト) [2016.5.14の講座のテキスト]

*2016.5.14の講座のテキスト*

(a)日本の政治・外交・防衛

・オバマ米大統領、27日に広島訪問へ(2016.5.10)

アメリカのオバマ大統領は、今月27日、現職のアメリカの大統領として初めて被爆地・広島を訪れることになりました。
これは、日本政府とアメリカ政府が、10日同時に発表したもので、オバマ大統領は、今月26日と27日開かれる主要国首脳会議・伊勢志摩サミットに出席したあと、広島を訪問する予定です。
オバマ大統領の広島訪問には、安倍首相が同行することになっています。
オバマ大統領としては、広島の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花し、大統領に就任した2009年プラハ演説で自らが提唱した「核なき世界」の理念を改めて広島から世界に向けて発信したい方針だといわれています。
安倍首相は、10日記者団に対し、「心から歓迎する」としたうえで、「今回のオバマ大統領の広島訪問が、すべての犠牲者を日米がともに追悼する機会としたい。核兵器のない世界に向けて、大きな力になると信じる」と述べました。

・ニュースの用語解説

アメリカのオバマ大統領は、2009年1月就任し、4月チェコのプラハで、「核兵器のない世界を目指す」と演説し、12月にはノーベル平和賞を受賞しています。
オバマ大統領は、2009年初めて日本を訪れた際、記者会見で「広島、長崎を将来訪れることができれば、非常に名誉なことだ」と述べていました。
しかし、オバマ大統領は、これまで3度日本を訪れていますが、いずれも被爆地訪問を見送っています。これは、アメリカ国内には、原爆投下によって戦争終結が早まり、多くのアメリカ人の命が救われたと正当化する主張が根強く存在し、被爆地訪問への慎重論があるためです。
オバマ政権下では、2010年当時のルース駐日大使が、アメリカ政府代表として初めて広島の平和記念式典に出席し、後任のケネディ大使も毎年式典に出席しています。今年7月には広島で開かれたG7=主要7か国外相会議に出席したケリー国務長官が、アメリカ政府の閣僚としては初めて平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花し、平和記念資料館(原爆資料館)を訪問しました。そして、「すべての人が広島を訪れるべきだ」と語り、オバマ大統領の広島訪問の下地を作ったといわれています。
アメリカ政府としては、ケリー国務長官の訪問の際にもそうであったように、アメリカの世論を考慮し、オバマ大統領の場合も、原爆投下についての謝罪には踏み込まない方針だといわれています。

・日ロ首脳会談、ソチで開催(2016.5.6)

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は、6日、ロシア南部ソチで会談し、平和条約締結問題について双方が受け入れ可能な解決策の作成に向け「新たな発想に基づくアプローチ」で精力的に交渉を進める」ことで一致しました。北方領土問題を含む事務レベルの平和条約締結交渉を6月に開くことでも合意しました。
 安倍首相が、9月にウラジオストクで開く東方経済フォーラムに合わせてロシアを訪問し、再びプーチン大統領と首脳会談を開くことも確認しました。プーチン大統領の日本訪問については、安倍首相は、「最も適切な時期を検討したい」と述べるにとどめました。
 会談で、安倍首相は、平和条約問題について「今までの交渉の停滞を打破しよう。問題解決にはグローバルな視点も考慮したうえで未来志向で交渉するアプローチが必要だ」と提案しました。
 安倍首相は、ロシア国民の生活環境の改善や産業経済革新に向けた8項目の協力プランを提案し、そのうち、エネルギー開発や医療、都市づくり、中小企業交流などでの協力強化が柱だと述べ、「これが実現できれば両国関係を2人で大きく深めることができる」と指摘しました。プーチン大統領は「すばらしい提案だ。実現させたい」と応じたということです。
 しかし、北方領土問題を巡っては、日本政府は4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するというのが基本方針で、平和条約締結後の2島返還が明記された1956年の日ソ共同宣言を重視するロシア側との溝は深く、「新しいアプローチ」で進展に結びつけられるかどうかは、今後の課題になっています。
安倍首相はウクライナ問題を巡って、ロシアが停戦合意の履行に建設的な役割を果たすよう求めました。
会談時間は夕食会も合わせて約3時間10分に上り、途中、両首脳が2人きりで話す時間も約35分ありました。
 両首脳は7月にモンゴルで開くアジア欧州会議(ASEM)や秋の国際会議を利用して会談の機会を探ることでも一致しました。

・ニュースの用語解説

北方領土というのは、北方4島ともいい、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島のことで、総面積は、5036平方キロで、千葉県とほぼ同じ広さです。
第2次世界大戦前には、日本人が1万人以上住んでいました。
日本が、1945年8月14日にポツダム宣言を受諾した後、当時のソ連(現在のロシア)軍が、占拠し、日本人を退去させました。
それ以来、ソ連、現在はロシア人が住んでいます。
日ソが国交を回復した1956年の日ソ共同言には、「(両国)が平和条約を締結後、ソ連は、歯舞群島(諸島」と色丹島を日本に引き渡す」と明記しています。
日本は、北方4島は日本の固有の領土だと主張し、4島の一括返還を求めています・
安倍首相は、2012年12月就任し、2013年4月日本の首相として10年ぶりにロシアを公式訪問し、プーチン大統領と会談し、「平和条約問題で、双方が受け入れ可能な解決策」を得るための交渉を加速させることで合意しました。しかし、その後、ロシアによるクリミア半島の編入に対して、日本は、アメリカ、ヨーロッパ諸国とともに、ロシアに対する制裁措置に踏み切り、平和条約交渉は、事実上中断したままになっています。

(b)日本の経済・貿易


・三菱自動車、日産自動車の傘下で再建へ(2016.5.12)

日産自動車は、燃費データ不正問題で苦境に立っている三菱自動車に対して、2300億円を超える巨額の出資を行い、事実上傘下に収めることになりました。
これは、日産自動車と三菱自動車工業が、12日、資本業務提携を発表した中で明らかにしたものです。
この資本業務提携では、日産が、三菱自動車が行う第三者割当増資を引き受ける形で株式の34%を取得するもので、日産が三菱自動車に出資する金額は、2373億円に上るということです。この結果、日産は、現在合わせて株式の3分の1を出資している三菱グループの主要3社を抜いて筆頭株主となり、三菱自動車を事実上傘下に収めることになります。
三菱自動車をめぐっては、4月20日以降、軽自動車4車種の燃費の偽装や1991年以降、ほぼすべての車種で、違法な燃費データ測定をしていたことなど不正が発覚、国内販売の6割を占める軽自動車の生産・販売停止に追い込まれ、苦境に立たされています。
日産にとっては、国内の販売の3分の1を占める軽自動車について、三菱自動車との協業を続けるとともに、三菱自動車の強みである東南アジアでのブランド力を取り込んで提携関係を深め、アジア市場での販売強化につなげるねらいがあるものとみられます。
両社は、次世代エコカーの本命に電気自動車(EV)を据えており、技術開発で連携を深めていく狙いもあるとみられています。
日産と提携先のルノー、それに三菱自動車を合わせると、昨年の世界全体の販売台数は、950万台を超え、世界一だったトヨタ自動車の1015万台、フォルクスワーゲンの993台、ゼネラルモーターズの984万台のトップ3に迫る規模になり、燃費データ不正問題は、業界再編に発展することになりました。

・ニュースの用語解説

日産自動車は、1933年設立。1999年販売不振で経営難に陥り、フランスのルノーと資本業務提携を結びました。現在ルノーが日産株式の43.4%、日産がルノー株式の15.0%を保有しています。2015年3月期の世界販売台数は、531万8000台。売上高11兆3752億円、純利益4575億円、従業員数14万9388人。
三菱自動車は、三菱重工業の自動車部門から1970年代に分離して設立。2000年代のリコール隠しが発覚した後、経営再建のため三菱重工業や三菱商事など三菱グループが株式の3割を保有しています。2015年3月期の世界販売台数は109万台、売上高2兆1807億円。純利益1181億円、従業員数3万498人。


(c)日本の社会

・熊本地震発生から1か月(2016.5.14)

熊本県を中心にした一連の地震は、発生してから14日で1か月を迎えました。
今なお1400回を超える余震が続いており、1万人以上の人たちが避難所での生活を送っています。
熊本県の集計によりますと、死者は49人、安否不明が1人、ほかに19人については関連死の可能性があるとみています。住宅の被害は、8万棟を超えています。
農林水産業の被害額は、1300億円に上っています。

一方、政府は、13日、熊本地震の復旧に向けた2016年度補正予算案を閣議決定しました。
追加歳出の7780億円のうち、全体のおよそ9割に当たる7000億円を熊本地震復旧予備費に充てることにしています。
予備費は、がれきの処理や道路や橋などのインフラの復旧、被災した企業の事業再建の支援などに充てる予定です。
補正予算案は、国会での審議を経て、17日には成立する見通しです。


・ニュースの用語解説

気象庁によりますと、熊本県では、4月14日の最初の地震は、マグニチュード6.5、震度7、16日の本震は、マグニチュード7.3、震度は同じく7を記録したということで、震度7を短期間に2度も記録したのは、これまでで初めてということです。震度1以上の地震は、この1か月で1,400回を超えています。

マグニチュード(magnitude)は、大きさとか規模の意味で、地震の全体としての規模を表す数値で、震源のエネルギーが大きいほど数値も大きくなります。
震度は、ある場所での地震動の強さの程度のことです。気象庁の震度階級球では、各地の計測震度計の観測によって、震度0~4、5弱、5強、6弱、6強、7の10階級に分けています。


(d)国際情勢


・パナマ文書のリスト公表(2016.5.10)

世界各国の首脳や富裕層などの隠れた資産運用を明らかにした「パナマ文書」の問題で、各国の記者でつくっている国際的な団体であるICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合は、10日、21万社を超える法人や関わりがあるとされる個人の名前をホームページ上で公表しました。
「パナマ文書」は、中米パナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した膨大な内部資料で、今回の公表で、この法律事務所が昨年までにタックスヘイブン=租税回避地とされる21の国や地域に設立したおよそ21万4000社の法人の情報が閲覧できるようになっています。
「パナマ文書」は、一部が4月に初めて公表されて以来、各国の首脳やその関係者の隠れた資産運用の実態が次々と明らかになり、市民から厳しい批判をあびたアイスランドの首相やスペインの産業相が辞任に追い込まれています。
批判の背景には、経済の低迷などを理由に各国の市民の税の負担が増えていることがあるとされ、各国の首脳や富裕層など一部の特権階級だけが税金から逃れることができる現状に不満をもっていることがきっかけとみられています。
「パナマ文書」では、日本を住所地とする400を超える個人や法人の名前があげられていますが、その多くが、租税回避はないという見解を発表しています。

・ニュースの用語解説

租税回避地、いわゆるタックスヘブン(tax haven)というのは、法人税や所得税などの税率がゼロかきわめて低い国・地域のことで、カリブ海のイギリス領バージン諸島やケイマン諸島などがあります。
これらの国・地域で資産を保有したり、金融取り引きをしたりすること自体は、違法ではありませんが、法人情報がほとんど公開されないため、税務当局の目が届きにくく、脱税や粉飾決算、資金洗浄の温床という批判もあります。

パナマ文書というのは、租税回避地、いわゆるタックスヘブンの会社の設立などを手掛ける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書のことです。1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類です。21万あまりの法人の情報の中には、10か国の現旧指導者12人、現旧指導者の親族ら61人の関係する会社も含まれています。芸能人やスポーツ選手の関係する会社もあります。

ICIJ(=International Consortium of Investigative Journalists 国際調査報道ジャーナリスト連合)というのは。は、1989年に創設された非営利の報道機関「Center for Public Integrity」の国際報道部門です。アメリカのワシントンに事務所があります。60か国以上のジャーナリストが連携し、国際的な問題を取材し、報道しています。
「パナマ文書」については、南ドイツ新聞が匿名の人物から入手し、ICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合に依頼し、各国の報道機関に分析と取材の協力を求めています。日本は、共同通信社と朝日新聞社が参加しています。

・北朝鮮で36年ぶりの党大会、新指導部決まる(2016.5.9)

北朝鮮で36年ぶりに朝鮮労働党大会が開かれ、最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が新設のポストの党委員長に就任するなど新しい党指導部が決まりました。
これは、4日間にわたった党大会の最終日の9日にきまったもので、このほか、党の中核をなす政治局常務委員には、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が再任され、現職の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常務委員長と黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長に加えて、新たに経済部門を統括する朴奉珠(パク・ポンジュ)首相と長く青年組織のトップをつとめた崔竜海(チェ・リョンヘ)党書記が選ばれ、3人体制から5人体制になりました。
さらに。政治局員19人、政治局員候補9人、中央委員129人が選出されました。中央委員には、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹で党の宣伝担当副部長をつとめる金与正(キム・ヨジョン)氏が含まれています。
今回の党大会では、核開発と経済再建を同時に進める「並進路線」を盛り込んだ党規約の改正、「核兵器の小型化、多種化を高い水準で実現し、核戦力を質・量的に強化して「東方の核大国」に輝かせていく」とする決定書なども採択しました。
金正恩(キム・ジョンウン)氏としては、もともと北朝鮮の最高指導者ですが、さらにその独裁体制を強化し、36年ぶりに開いた最高指導機関である朝鮮労働党で新たに設けた最高位のポストの党委員長に就任することによって、内外に「金正恩(キム・ジョンウン)時代」の本格的な幕開けを印象づけようとする狙いがあったものとみられています。

・ニュースの用語解説

今回の第7回朝鮮労働党大会が採択した主な政策方針は以下の通りです。
体制・思想―金正恩(キム・ジョンウン)同志を主体(チュチェ)革命の最高位に頂く、全党の金日成・金正日主義化を行う、野心家、陰謀家などが幹部に入り込まないようにする
外交・安全保障―核保有国の地位を堅持する、自衛的な核戦力を質・量的に強化する、核技術を絶えず発展させ、「東方の核大国」に輝かせる、連邦制方式の統一実現に努力する
経済―国家経済発展5か年戦略(2016年~2020年)の遂行、食糧の自給自足の実現


・フランスの検察当局、東京五輪招致で多額の送金で捜査(2016.5.16)

フランスの検察当局が、2020年の東京オリンピック招致をめぐって、日本側が国際陸上競技連盟に多額の協賛金を送金した疑惑について、捜査していることが明らかになりました。
フランスの検察当局は、日本の銀行の口座から、国際陸連のラミン・ディアク前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの銀行口座に、2013年7月と10月に「東京オリンピック招致」の名目で、およそ2億2000万円が振り込まれた可能性があるとして贈収賄などの疑いで捜査をしているということです。検察当局は、同じころ、ディアク氏が、パリで多額の金銭を支出していたことを確認したということです。
この問題は、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会が、今年1月、2020年の東京オリンピック招致をめぐって、日本側が国際陸連などに多額の協賛金を支払ったことを指摘しています。ディアク前会長は、東京オリンピック招致が決定した2013年9月には、IOC=国際オリンピック委員会の委員をつとめていて、開催地の決定に影響力を行使できる立場にあったとみられています。

一方、この報道について、2020年東京オリンピック招致委員会で理事長をつとめたJOC=日本オリンピック委員会の竹田恒和会長は、13日記者団に、フランス検察当局に指摘された計280万シンガポールドル、日本円にしておよそ2億2200万円の送金は、シンガポールに所在するコンサルタント会社へのものと確認したうえで、「業務に対するコンサルタント料で問題があるとは思っていない。招致活動はフェアに行ってきたと確信している」と述べ、送金の事実を認めたうえで、疑惑を否定しました。
























タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

16.時事問題の基礎入門講座(2016.4.9の講座のテキスト) [2016.4.9の講座のテキスト]

*2016.4.9の講座のテキスト*

(a) 日本の政治・外交・防衛

・衆議院選挙制度改革の自民党案成立へー2016.4.8

「1票の格差」を是正するために衆議院選挙制度を改革する自民党案が、今の国会で成立する見通しになりました。
衆議院議員の定数は、現在475人で、そのうち295人が1選挙区で1人を選出する小選挙区選挙ですが、選挙区によっては有権者の数に大きな開きがあり、2倍を超えるところもでています。選挙権は有権者に平等に与えられる権利ですが、1票の格差が2倍以上になると、裁判では、「違憲状態」とみなされます。過去3回の衆議院選挙が連続で最高裁に「違憲状態」と判断され、「1票の格差」の是正が課題になっています。
衆議院選挙制度の改革については、人口比に応じて定数を配分する、いわゆるアダムズ方式を導入することでは与野党は一致していますが、自民党は、2020年の国勢調査後にする案を、野党の民進党は、2010年の国勢調査にさかのぼって即時導入する案をそれぞれ来週国会に提出することを決めました。
これは、与野党の調整役をしていた大島衆議院議長が、7日自民、民進両党に改革案をそれぞれ国会に提出するよう要請し、多数決で決める方針を正式に表明したためです。
自民党案は、アダムズ方式の導入時期を2020年の国勢調査以降に導入し、小選挙区の「0増6減」と比例区の「0増4減」を先行実施するもので、公明党も7日これに同意しました。これによって自民党案は、賛成多数で可決される見通しです。

・ニュースの用語解説

アダムズ方式というのは、人口に比例して議員定数を配分する方法の1つで、アメリカの第6代大統領のアダムズが提唱したとされています。
これによりますと、国勢調査で出た都道府県の人口をある定数で割って得られた商の小数点以下を切り上げ1議席を加えたものをその自治体の議席数とする方式です。この方式によれば、各都道府県の人口比を反映しやすいし、「1票の格差」の是正にもつながるといわれています。
衆議院選挙制度改革に関する自民党案というのは、2020年の国勢調査を基準とするアダムズ方式の導入する、先行させる定数削減については、2015年の簡易調査結果に基づいてアダムズ方式を部分的に使い、議員1人あたりの人口が少ない順に削減する県や比例ブロックを選ぶとし、小選挙区では、青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県で定数を各1減の「0増6減」、比例区では、東北、北陸信越、近畿、九州の4ブロックでそれぞれ1減の「0増4減」というものです。


(b) 日本の経済・貿易

・TPP関連法、国会で審議入りー2016.4.5

TPP=環太平洋経済連携協定の承認案と関連法案が、5日衆議院本会議で審議入りし、政府与党は、いまの国会の会期中の成立を目指していますが、野党は、政府与党をきびしく追及しています。
TPPは、日米など12か国が参加している関税撤廃や投資などのルールを決めた自由貿易協定です。これら12か国は、2月協定に署名し、協定の発効に向けて、それぞれの国が国内手続きを進めることになっています。
安倍首相は、5日の衆議院本会議で、「TPPは、8億人の市場、世界の4割の経済圏を生み出す。日本経済が力強く成長していく基礎となる。成長戦略の切り札としていく」と述べ、協定の意義を強調しました。
一方、野党は、自民党が政権交代を果たした2012年12月の衆議院選挙で「聖域なき関税撤廃を前提とするTPP参加に反対」と公約していたことを指摘し、公約違反などと追及しました。
また、野党は、今回の協定では、国会で関税を守る「聖域」として決議した「重要5項目」のコメ、麦、砂糖、牛・豚肉、乳製品のおよそ3割の品目で関税が撤廃されていると指摘し、「明白な国会決議違反」だと非難しました。
TPP承認案と関連法案は、後半国会の最大の対決法案となっています。

・ニュースの用語解説

TPP協定では、参加国は、95%から100%の品目の関税を撤廃するほか、ビジネスや投資に規制も緩和することになっています。日本は、日本が輸入する農林水産品や工業製品など9321品目のうち、95%に当たる8862品目の関税を撤廃することになっています。
TPPの関連法案は、関連する11本の法律の改正事項を1本の法案に取りまとめたもので、関税が下がって輸入が急増した時の緊急輸入制限(セーフガード)の手続きを定める関税暫定措置法の改正や著作権の保護期間をいまの「作者の死後50年」から「死後70年」に延ばす著作権法の改正などが盛り込まれています。
政府としては、世界経済のおよそ4割を占める自由経済圏の貿易協定であるTPP協定の発効に向け、今国会の会期中の承認、成立をめざす方針です。
しかし、民主党、共産党など野党は、TPP協定に反対しており、政府による協定の経済効果の試算には疑問がある、関税撤廃が国内の農家に与える影響は大きいなどと主張して、政府を追及する構えです。
また、TPP協定の発効には、日本に加えてアメリカの批准が不可欠ですが、アメリカでは、11月に大統領選挙が予定されており、有力候補である民主党のクリントン前国務長官も共和党のトランプ氏もTPP協定に反対という立場をとっており、議会での批准承認には難航が予想されています。いずれにせよ、アメリカの批准は、大統領選挙後になるものとみられています。


(c)日本の社会

・福岡高裁、川内原発運転停止の申し立て認めずー2016.4.6

鹿児島県にある川内(せんだい)原子力発電所の運転停止を求めていた住民の申し立てについて、福岡高等裁判所は、6日これを退ける決定を下しました。
鹿児島県にある九州電力川内原発の1号機と2号機について、鹿児島県などの住民12人は、運転の停止を求める仮処分を申し立てましたが、昨年4月鹿児島地方裁判所が退けたため、福岡高等裁判所に抗告していました。
6日の決定で、裁判長は、地震への備えを定めた新規制基準や原子力規制委員会の審査に「不合理な点はない」という判断を示し、鹿児島地裁の決定を支持し、住民側の抗告を棄却しました。
住民側は、決定を不服として、最高裁への特別抗告などを検討することにしています。
川内原発は、2011年の東京電力福島原発の事故の後作られた新規制基準の下で、全国で初めて1号機が昨年8月に再稼働し、2号機も昨年10月に再稼働しています。
原発をめぐる裁判では、先月大津地裁が稼働中の原発としては初めて、福井県にある高浜原発の3号機と4号機の運転停止を命じており、裁判所の判断が分かれることになりました。

・ニュースの用語解説

今回の福岡高裁と先月の大津地裁の判断の違いは、原発の安全性をどうみるかにあります。
大津地裁は、「高浜原発の周辺で関西電力が行った断層の調査は、海底を含む周辺領域すべてで徹底的に行われたわけでなく、断層が連動して動く可能性を否定できない」としています。福島の事故原因が解明されていない中で、同様の事故を2度と起こさないための、電力会社の安全対策が不十分だとし、新規制基準に向かう原子力規制委員会の姿勢にも不安を表明しています。
一方。福岡高裁は、九州電力が行った断層の調査について、「徹底した調査の結果、敷地周辺で確認された断層は、長期間活動がないと判断され、将来活動する可能性のある断層の存在は否定されている」としています。差し止めの判断基準となる社会通念は、最新の科学的知見を超える絶対的安全性までは求めておらず、合理的に予測される災害を想定している新規制基準は妥当だという見解を示しています。
今後さまざまな原発をめぐる裁判の中で、司法がどういう判断を示すか注目されますが、この問題をめぐっては、司法だけでなく、行政、立法、科学者、市民などを交えた広範な議論が必要だと思われます。


(d)国際情勢

・パナマ文書公表で各国に衝撃―2016.4,8

各国の首脳やその関係者が租税回避地、いわゆるタックスヘブンを利用していたと指摘したパナマ文書が公表され、各国に衝撃を与えています。
ICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合による調査報道で、中米パナマにある法律事務所の文書が流出し、各国の首脳やその関係者が、カリブ海のイギリス領バージン諸島などの租税回避地いわゆるタックスヘブンにある企業を通じて金融取引を行っていたことなどが明らかになったもので、この中には、アイスランドのグンロイグソン首相、イギリスのキャメロン首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、ウクライナのポロシェンコ大統領なども含まれています。
アイスランドのグンロイグソン首相は、2007年にタックスヘブンのイギリス領バージン諸島に夫婦で購入した会社を通じて、自国の3つの銀行の債券に日本円にして数億円の投資をしていながら、これを公表してこなかったと指摘されていましたが、7日正式に辞任しました。
イギリスのキャメロン首相は、過去にこうした企業の株式を保有していたことを認めており、これまでタックスヘブンを通じた課税逃れに厳しく対処する姿勢を示していただけに、批判が高まりそうです。
ロシアのプーチン大統領は、古くからの友人の音楽家がタックスヘブンにある企業を通じて、およそ2200億円の金融取り引きを行っていたとされ、ロシアでは、大統領への賄賂を工面していたのではないかとして、疑惑の声が上がっていましたが、大統領は、7日「いかなる汚職もなく、ロシアに対するゆさぶりだ」と欧米がしかけた、いわゆる「情報戦」だとして、強く反発しました。
中国の最高指導部7人のうち、習近平国家主席を含む3人の親族についても、パナマ文書で、名前が挙がっていますが、中国国内では報道が厳しく規制されていて報道されていません。
来日中のウクライナのポロシェンコ大統領は、「何も隠しておらず、透明性を確保した手続きの下で行っている」と述べ、疑惑を否定しました。

・ニュースの用語解説

租税回避地、いわゆるタックスヘブン(tax haven)というのは、法人税や所得税などの税率がゼロかきわめて低い国・地域のことで、カリブ海のイギリス領バージン諸島やケイマン諸島などがあります。
これらの国・地域で資産を保有したり、金融取り引きをしたりすること自体は、違法ではありませんが、法人情報がほとんど公開されないため、税務当局の目が届きにくく、脱税や粉飾決算、資金洗浄の温床という批判もあります。

パナマ文書というのは、租税回避地、いわゆるタックスヘブンの会社の設立などを手掛ける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書のことです。1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類です。21万あまりの法人の情報の中には、10か国の現旧指導者12人、現旧指導者の親族ら61人の関係する会社も含まれています。芸能人やスポーツ選手の関係する会社もあります。

ICIJは、1989年に創設された非営利の報道機関「Center for Public Integrity」の国際報道部門です。アメリカのワシントンに事務所があります。60か国以上のジャーナリストが連携し、国際的な問題を取材し、報道しています。

・世界の軍事費4年ぶりに上昇―2016.4.5

昨年の世界の軍事費は、前の年に比べておよそ1%増えて1兆6760億ドル、日本円にして186兆円で、4年ぶりに増加に転じたことがスウェーデンの研究所の調査でわかりました。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所が5日発表したところによりますと、内戦が続くシリアやイエメンを抱える中東、中国による南シナ海への海洋進出によって緊張が高まるアジア太平洋、紛争が続くロシアとウクライナの周辺国を含む東欧などで、軍事費が増えたことから、世界の軍事費は、増加に転じたということです。
国別にみますと、アメリカが軍事費が最も多く1位で前の年より2.4%減少して、5960億ドルと、全体のおよそ36%を占めています。
続く2位が中国で、前の年より7.4%増えて2150億ドル、3位は、イエメンでの空爆を主導するサウジアラビアで、5.7%増えて872億ドルとなっていす。
4位がロシア、5位がイギリス、6位がインド、7位がフランス、8位が日本、9位がドイツ、10位が韓国となっています。

・ニュースの用語解説

世界の軍事費については、ロンドンの国際戦略研究所(IISS)の「ミリタリー・バランス」とストックホルムの国際平和研究所(SIPRI)の「世界の軍事費に関する報告書」が毎年発表されて、注目されています。

・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)2016.4.5発表、2015年の軍事費
① アメリカ     5960億ドル
② 中国       2150億ドル
③ サウジアラビア   872億ドル
④ ロシア       664億ドル
⑤ イギリス      555億ドル
⑥ インド       513億ドル
⑦ フランス      509億ドル
⑧ 日本        409億ドル
⑨ ドイツ       394億ドル
⑩ 韓国        364億ドル



・ロンドンの国際戦略研究所(IISS),2016.2.9発表、「ミリタリー・バランス2016」の2015年の国防支出

① アメリカ     5975億ドル
② 中国       1458億ドル
③ サウジアラビア   819億ドル
④ ロシア       656億ドル
・・・・・

・・・・
・・・・・
⑧日本         410億ドル

注ー ・・・・の部分は、不明です。





タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

15.時事問題の基礎入門講座(2016.3.12の講座のテキスト) [2016.3.12の講座のテキスト]

*2016.3.12の講座のテキスト*

(a)日本の政治・外交・防衛


(b)日本の経済・貿易

・ 政府、TPP承認案と関連法案を閣議決定、国会提出(2016.3.8)

政府は、8日、TPP=環太平洋経済連携協定の批准に向け、国会の承認を求める議案と関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。
TPP協定をめぐっては、日本やアメリカなど参加12か国は、2月協定文書に署名し、協定の発効に向けて、それぞれの国が国内手続きを進めることになっています。
TPP協定には、参加国は、95%から100%の品目の関税を撤廃するほか、ビジネスや投資に規制も緩和することになっています。日本は、日本が輸入する農林水産品や工業製品など9321品目のうち、95%に当たる8862品目の関税を撤廃することになっています。
TPPの関連法案は、関連する11本の法律の改正事項を1本の法案に取りまとめたもので、関税が下がって輸入が急増した時の緊急輸入制限(セーフガード)の手続きを定める関税暫定措置法の改正や著作権の保護期間をいまの「作者の死後50年」から「死後70年」に延ばす著作権法の改正などが盛り込まれています。
政府としては、世界経済のおよそ4割を占める自由経済圏の貿易協定であるTPP協定の発効に向け、今国会の会期中の承認、成立をめざす方針です。
しかし、民主党、共産党など野党は、TPP協定に反対しており、政府による協定の経済効果の試算には疑問がある、関税撤廃が国内の農家に与える影響は大きいなどと主張して、政府を追及する構えで審議は難航するものとみられています。
また、TPP協定の発効には、日本に加えてアメリカの批准が不可欠ですが、アメリカでは、11月に大統領選挙が予定されており、有力候補である民主党のクリントン前国務長官も共和党のトランプ氏もTPP協定に反対という立場をとっており、議会での批准承認には難航が予想されています。いずれにせよ、アメリカの批准は、大統領選挙後になるものとみられています。

・ニュースの用語解説

TPP(=Trans-Pacific Partnership free trade agreement)は、環太平洋経済連携協定または環太平洋パートナーシップ協定などといわれています。
もともとTPPは、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4か国で2006年に発効した自由貿易協定で、2010年アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムを加え、8か国で交渉開始、マレーシアの交渉参加で9か国に、2012年メキシコ、カナダの交渉参加で11か国、2013年日本の交渉参加で、合わせて12か国になりました。
TPP交渉では、モノやサービスのやりとりを自由化することを原則に、貿易だけでなく、特許など知的財産権の保護や投資などについての共通のルール作りを目指しました。
TPP交渉は、2015年10月アメリカのジョージア州アトランタで開かれた閣僚会合で大筋合意に達しました。
そして、TPP協定に参加する日本、アメリカなど12か国は、2016年2月ニュージーランドのオークランドで、協定の署名式を行いました。
TPPは、日本やアメリカなど世界のGDP=国内総生産の4割を占める12か国が参加し、アジア太平洋地域での貿易や投資の自由化に加え、サービスや知的財産などのルールを決める包括的な経済連携協定です。
TPP協定の署名によって、2015年10月に大筋合意した協定文が確定し、今後は、議会承認などの国内手続きが本格化することになります。協定が発効するためには、2つの段階があります。2年以内に参加する12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば、協定は発効することになっています。しかし、2年以内にこうした手続きを終えることができなかった場合には、12か国のGDPの85%以上を占める少なくとも6か国が手続きを終えれば、その時点から60日後に協定が発効することになっています。
TPPをめぐっては、12か国のほかに、韓国、インドネシア、台湾、タイ、フィリピンが参加の意向を明らかにしています。

(c)日本の社会

・東日本大震災から5年(2016.3.11)

東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故の発生から11日で5年を迎えました。
発生時刻の午後2時46分には、被災地のほか全国各地で黙とうし、犠牲者への祈りをささげました。東京では、政府主催の追悼式が行われました。
5年前の2011年3月11日、東北沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北や関東の沿岸に高さ10メートルを超える津波が押し寄せ、各地に多くの被害をもたらし、多数の犠牲者を出しました。
警察庁が10日現在でまとめたところによりますと、これまでに死亡が確認された人は、1万5894人、行方不明者は、2561人となっています。
また、復興庁がまとめたところによりますと、震災後の体調悪化や自殺による震災関連死は、3407人に上り、震災による犠牲者は、関連死を含めると2万1000人を超えています。
復興庁によりますと、仮設住宅や賃貸住宅など避難生活を余儀なくされている人は、17万4000人余りとなっています。また、自力で住宅を再建できない人のために建設される災害公営住宅は、2万9900戸余りの計画に対して、完成しているのは、1万4466戸と48%にとどまっています。
一方、東京電力福島第1原子力発電所では、3基の原子炉でメルトダウンが起きるという世界最悪レベルの事故が発生しましたが、現在は、廃炉に向けたきわめて困難な作業が行われています。溶け落ちた核燃料の取り出しに向けた調査、汚染水の処理などです。さらに、原発事故による避難指示区域からの避難者は、およそ7万人に及んでおり、避難指示が解除された地域についても帰還者は少ないといわれています。
政府が決めた集中復興期間は、3月末で終わりますが、東北などの被災地では、住宅の建設や防波堤や道路の整備など当初の計画より遅れるなど復興の遅れが大きな課題となっており、被災地がかつての日常を取り戻すにはまだ道は遠いとみられています。

政府は、東日本大震災から5年となる11日の閣議で、東日本大震災の復興に関する2016~2020年度の基本方針を決定しました。
今後の5年間を復興の「総仕上げ」にあたる「復興・創生期間」と位置づけ、被災地の自立を促す支援策を明記し、復興事業費として6兆5000億円を計上しています。
地域ごとに復興の進捗にばらつきがあることを踏まえ、心身のケアから農業、産業再生まできめ細かく支援する、鉄道の復旧や東北地方への外国人観光客の誘致を加速させるなどの方針を打ち出しています。
東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響が残る福島県については、2020年度以降も、政府が前面に立って中長期的な対応に取り組むことを強調しています。

。ニュースの用語解説

・東日本大震災の復興予算

東日本大震災の復興については、政府は、2011年度から10年間を「復興期間」と定め、総額32兆8000億円を復興予算として計上しています。
これまでの5年間を「集中復興期間」とし、26兆3000億円を、これからの5年間を「復興・創生期間」とし、6兆5000億円を割り当てています。
これまでの5年間は、住宅再建・まちづくりに10兆円、被災者の健康・生活支援に2兆1000億円、産業・なりわいの再生に4兆1000億円、原子力災害からの復興に1兆6000億円などを割り当てています。
これらの財源としては、復興増税10兆5000億円で、そのうち所得税7兆3000億円、法人税2兆4000億円などです。また、歳出の削減6兆9000億円で、子ども手当の見直し、高速道路無料化の見直し、公務員人件費の削減によるものです。さらに、政府資産の売却やその他の収入で5兆6000億円などとなっています。
「集中復興期間」の予算の総額26兆3000億円は、国の2016年度予算案の96兆7000億円の4分の1強、被災の宮城、岩手、福島3県の予算案の4兆3000億円のおよそ6倍にあたります。国民1人あたり20万円程度になる大きさです。

・高浜原発、運転差し止め命令(2016.3.9)

福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機の原子炉について、住民が運転停止を求めていた裁判で、大津地方裁判所は、9日、運転中の原発に対して運転停止を命じる仮処分の決定をしました。
2011年3月の東京電力福島原発の事故後に再稼働した原発の運転を禁止する司法判断は初めてです。
大津地裁は、福島原発事故の原因が解明されていない中で、地震や津波への対策や避難計画に疑問が残ると指摘し、安全性に関する関西電力の証明は不十分だと判断しました。
この判断は、高浜原発の2基について、滋賀県内の住民29人が、再稼働前の昨年1月運転の停止を求める仮処分を申し立てていたことに対して行われたもので、仮処分は、ただちに効力をもつため、関西電力は、すみやかに運転を停止することになります。
高浜原発の3号機と4号機の2基は、2015年2月国の原子力規制委員会が行った新規制基準への適合性審査に合格し、3号機は今年1月に再稼働し、4号機も翌2月に再稼働しながら、直後にトラブルが発生したため、運転を停止しています。
関西電力側は、仮処分の決定は、到底承認できないとして、運転停止を命じる決定の取り消しを求めて裁判所に異議申し立てを行う方針を明らかにしました。
菅官房長官は、記者会見で、「高浜原発の3号機と4号機は、独立した原子力委員会が、専門的見地から十分時間をかけて、世界最高水準といわれる新規制基準に適合すると判断したものであり。政府としては、その判断を尊重して、原発の再稼働を進める方針に変わりはない」と述べました。

・ニュース用語解説

・原子力規制委員会
政府は、2011年3月の東京電力福島第1原発の事故のあと、原子力規制を一元化するため、2012年9月原子力規制委員会を発足させました。原発の再稼働に向けた審査や事故対応、放射線モニタリング、核不拡散の保障措置など原子力の規制を一元的に担う組織で、環境省の外局ですが、独立した権限をもっています。原発推進の経済産業省から規制部門の原子力安全・保安院を分離し、原子力安全委員会や文部科学省の関連部門を統合したものです。

・新規制基準
原子力規制委員会は、2013年6月原発再稼働の条件となる原発の新規制基準を策定し、同年7月施行されました。この基準は、①大きく想定を上回る自然災害やテロ攻撃などに備えた重大事対策②活断層調査の強化や津波防護策を定めた設計基準である耐震・耐津波性能③既存設備の安全対策を強化する設計基準である自然現象・火災に対する考慮などを定めています。原発の運転期間については、基本40年、最長60年としています。

2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、国内の原発すべては停止されました。
しかし、2015年8月、新規制基準の下で、原発の再稼働が始まりました。
これは、九州電力は、鹿児島県にある川内(せんだい)原子力発電所1号機を起動し、再稼働させましたためです。2011年3月東日本大震災の際起こった東京電力福島第1原子力発電所の事故の後、2013年7月に原子力規制委員会の新規制基準が導入されてから、原発が再稼働したのは、初めてです。続いて、川内原発2号機も2015年10月再稼働しました。
関西電力高浜原発3号機、4号機(福井県)が2015年2月に、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が2015年7月に原子力規制委員会から新規制基準に適合すると認められました。

・高浜原発3号機、4号機
原子炉は、加圧水型炉で、3号機、4号機ともに87万キロワットです。1985年に運転を開始しました。2011年3月の東日本大震災の際の東京電力福島第1原発事故後、3号機は、2012年2月、4号機は、2011年7月から定期検査のための運転を停止しました。2015年4月福井地方裁判所の運転差し止めの仮処分の決定で2基は動かせなくなりました。しかし、同年12月福井地裁は関西電力が申し立てた保全異議を認め、運転差し止めの決定を取り消しました。2基は、今年1月と2月にそれぞれ再稼働していました。しかし、4号機は、2月末変圧器の保護機器のトラブルのため、緊急停止し、冷温停止の状態に戻しているといわれます。


(d)国際情勢

・米韓、最大規模の合同軍事演習、北朝鮮、米韓との対決姿勢(2016.3.7)

アメリカ軍と韓国軍は、7日韓国でこれまでで最大規模の合同軍事演習を開始し、一方北朝鮮は、対決姿勢を強めています。
米韓合同演習は、毎年この時期に韓国で行われているものですが、今回は、北朝鮮による1月の核実験や2月の事実上の長距離弾道ミサイルの発射を受けて、過去最大規模となり、韓国軍からおよそ30万人とアメリカ軍からおよそ1万7000人が参加しているほか、アメリカの原子力空母「ジョン・ステニス」や最新鋭のステルス戦闘機「F22」なども派遣されています。
演習には、北朝鮮が核ミサイルを発射する兆候をつかんだ場合の先制攻撃を想定したシナリオも含まれているということです。
演習は、韓国各地で4月30日まで行われる予定です。
一方、北朝鮮の国防委員会は、7日国営の朝鮮中央通信を通じて声明を発表し、「アメリカとその追従勢力からの核戦争の挑発に対応するため、総攻勢に入る。そして、より先制的で攻撃的な核攻撃になるだろう」と述べ、対決姿勢を強めています。

・ニュースの用語解説

米韓合同軍事演習は、3月7日から韓国各地で始まり、核・ミサイル開発を続けて脅威を増している北朝鮮に対して、米韓は想定をゲリラ戦主体の戦闘態勢で対応する「史上最大、史上最先端」の演習です。
演習は、米軍の増援演習「キー・リゾルブ」と米韓軍の野外実働演習「フォール・イーグル」を同時におこなっています。「キー・リゾルブ」は、増援軍は、武器弾薬などの集積地となる南部・慶尚北道倭館の在韓米軍基地「キャンプ・キャロル」などに集結、96時間以内に前線に展開する演習で、「フォール・イーグル」は、水陸両用車や攻撃ヘリなどを使った上陸・進撃訓練、特殊部隊が参加する
核兵器などの大量破壊兵器除去訓練、空爆やミサイル攻撃、特殊部隊などを使った敵重要拠点の制圧訓練などです。
規模は、韓国軍およそ30万人、アメリカ軍およそ1万7000人で、韓国側が例年の1.5倍、アメリカ側が2倍になっています。アメリカ軍から原子力空母、原子力潜水艦、強襲揚陸艦。空中給油機なども参加しています。

・中国、経済成長率の目標引き下げ(2016.3.5)

中国が、経済の減速が鮮明になる中で、今後5年間の中期計画で、経済成長率の目標を6.5%に引き下げることを明らかにしました。
これは、李克強首相が、5日始まった全人代=全国人民代表大会で行った政府活動報告の中で明らかにしてものです。
李首相は、2016年から2020年までの5年間の経済成長率の目標を年平均6.5%以上とするとして、昨年までの5年間の7%よりも引き下げる方針を明らかにし、「産業構造の最適化と高度化を加速する」と述べ、構造改革を進める必要があることを強調しました。
一方、国防予算案は、前年実績比7.6%増の9543億5400万元、日本円でおよそ16.7兆円になりました。6年ぶりで1桁増に留まりましたが、主要国では突出した伸び率になっています。5か年計画では、海洋権益の開拓を重要項目に掲げ、今後も南シナ海などでの海洋進出を強化していくことを明らかにしました。

・ニュースの用語解説

全人代は、全国人民代表大会のことで、中国の憲法では、国の最高権力機関と位置づけられています。日本の国会にあたります。全国の省や市、軍などから選出された代表3000人で構成され、任期は5年です。北京の人民大会堂で毎年3月1回開かれ、憲法改正や法律の制定、予算審議などを行います。このうち、今後1年間の施政方針を示す首相の政府活動報告は、国内外から注目されています。














タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

14.時事問題の基礎入門講座(2016.2.13の講座のテキスト) [2016.2.13の講座のテキスト]

*2016.2.13のテキスト*

(a)日本の政治・外交・防衛

・日韓両政府、北朝鮮に対する制裁措置発表(2016.2.10)

日本と韓国両政府は、核実験と長距離弾道ミサイル発射を行った北朝鮮に対して、それぞれ制裁措置を発表しました。これに対して、北朝鮮は、激しく反発しました。

日本政府は、10日NSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、北朝鮮に対する独自の制裁措置を決めました。
これらの制裁措置は、2014年7月北朝鮮が拉致被害者らの調査を開始した際に解除した制裁措置を復活させたほか、新たな措置を盛り込んでおり、北朝鮮に向けた送金の原則禁止や北朝鮮のすべての船舶の入港禁止、人的往来の規制強化が柱になっています。
具体的には、北朝鮮籍の人の入国の原則禁止、北朝鮮への渡航自粛、朝鮮総連=在日本朝鮮人総連合会の関係者などに加え、在日外国人で核やミサイルに関連する技術者が北朝鮮に渡航した場合、日本への再入国を禁止するなど人の往来をめぐる規制を強化するとしています。
また、日本から北朝鮮に現金を持ち出す際、国に届ける金額を10万円を超える額に引き下げるほか、北朝鮮向けの送金は、人道目的で10万円以下の場合を除いて原則として禁止するとしています。さらに、人道目的の船舶を含むすべての北朝鮮籍の船舶に加え、北朝鮮に寄港した第三国籍の船舶の入港を禁止するほか、資産凍結の対象となる関連団体や個人を拡大するとしています。
日本政府は、国連安全保障理事会の北朝鮮に対する制裁決議採択に先駆けて、韓国と歩調を合わせて、これらの制裁措置を発表したものです。

一方、韓国政府は、10日、韓国と北朝鮮が北朝鮮の南西部で共同運営しているケソン(開城)工業団地の操業を全面的に中断すると発表しました。
ケソン工業団地は、2000年の南北首脳会談の合意に基づいて造成され、2004年に生産を開始し、現在入居している韓国企業は124社で、北朝鮮労働者は5万4700人で、北朝鮮にとって貴重な外貨獲得の手段になっています。
韓国政府の声明は、ケソン工業団地について、北朝鮮は、これまで総額6160億ウオン(約590億円)の現金が入り、その金は、核兵器と長距離弾道ミサイルの高度化に悪用される結果になったとし、これ以上、核・ミサイルの開発に利用されるのを防ぐため、全面中断を決め、北朝鮮に通告したと述べています。

これに対して、北朝鮮は、日本と韓国に対して、激しく反発しました。

朝鮮中央通信が伝えたところによりますと、北朝鮮は、12日、日朝合意に基づいた日本人に関する包括的な調査を同日から全面的に中止し、調査を担当する特別調査委員会を解体すると発表しました。そして日本に対し、「より強力な対応措置が続くことになる」と警告し、「今日の重大な結果を生んだ全責任を生んだ全責任は、安倍政権が負わなければならない」と主張しました。

北朝鮮は、韓国に対して、11日、突然「ケソン工業団地を閉鎖し、軍事統制区域とする」と発表しました。そして、韓国の入居企業124社の全資産を凍結し、事実上没収する考えを示しました。また、北朝鮮は、同団地の韓国人全員の「追放」を宣言するとともに、同団地と韓国を結ぶ通信も打ち切りました。さらに、南北間の軍事通信と境界線上にある板門店の連絡通信網も閉鎖したため、南北の公式な対話チャンネルはすべて途絶えてしまいました。

アメリカ議会の上院は、10日、核実験や事実上の長距離弾道ミサイルの発射を行った北朝鮮に対する制裁措置を強化する法案を全会一致で可決しました。
法案は、北朝鮮の核兵器開発や人権侵害、サイバー攻撃などに関与した個人・団体に対し、資産凍結や渡航制限や金融取引の停止などを科すことになっています。核・ミサイル開発に関係する材料や鉱物資源、ぜいたく品の取引にかかわった第三国の企業も制裁対象とるのが特徴で、これは、最も取引の多い中国企業を念頭に置いたものとみられています。
下院もすでに同様の法案を可決しており、オバマ大統領の署名を経て成立する見通しです。

・ニュースの用語解説

・北朝鮮による日本人拉致問題
1970~80年代北朝鮮による日本人拉致事件が相次ぎ、2002年小泉首相との首脳会談でキム・ジョンイル総書記は日本人13人を拉致したことを認め謝罪、拉致被害者5人と家族は2004年までに帰国しました。
日本政府は、17人を拉致被害者と認定しています。帰国した5人を除く12人について、北朝鮮は、これまで8人は死亡、4人は入国していないと主張してきました。
2014年5月日本と北朝鮮の両政府は、北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査を実施し、日本が北朝鮮への独自制裁の一部を解除することで合意しました。同年7月北朝鮮は調査を開始し、日本は制裁措置の一部を解除しました。北朝鮮は、当初、調査機関を「1年をめど」としていましたが、2015年7月報告の延期を通告してきて以来、進展はありません。北朝鮮は、日本政府との非公式の接触で、「8人は死亡、4人は入国していない」という過去の調査結果をくつがえしていないということです。

・ケソン(開城)工業団地
ケソン(開城)は、北朝鮮の南西部の都市で、ケソン工業団地は、2000年に行われた韓国のキム・デジュン(金大中)大統領と北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)総書記の首脳会談をきっかけに造成され、2004年に生産が始まりました。業種は、繊維が58%、機械金属が19%などで、大半が中小企業だといわれています。2005年から2015年までの生産額は、約30億4000万ドル(約3500億円)とみられています。

(b) 日本の経済・貿易

・世界経済懸念、株安、円高続く(2016.2.12)

中国経済の減速、原油価格の下落など世界経済の先行きに対する懸念から金融市場が動揺している中で、株安と円高が続いています。
12日の東京株式市場は、世界的な景気減速への懸念や急速な円高進行を受けてほぼ全面安となり、日経平均株価(225種)は、およそ1年4か月ぶりに1万5000円を割り込みました。
祝日明けの12日の東京株式市場は、朝方から全面安の展開となり、日経平均株価は、一時、800円以上の急落となりました。
結局、12日の終値は、10日より760円78銭安い、1万4952円61銭となり、おととし10月以来およそ1年4か月ぶりに1万5000円を割り込みました。

12日の東京外国為替市場は、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のイエレン議長の議会での証言でアメリカの追加の利上げが遠のいたと受け止められたことで、比較的安全だとされる円が買われ、円相場は、一時111円台後半で取引されました。
午後5時現在で休日前の10日に比べ、2円72銭の円高ドル安の1ドル=112円16銭から18銭でした。
円相場は、昨年末の時点では、1ドル=120円台でしたが、中国経済の減速や原油価格の下落に加え、アメリカ経済の先行きなどに対する懸念が出たため、比較的安全とされる円を買う動きが強まり、円はドルに対して8円以上値上がりしたことになります。

(c) 日本の社会

(d) 国際情勢

・北朝鮮、長距離弾道ミサイル発射、国連安保理、非難声明(2016.2.7)

北朝鮮は、先月の核実験に続いて、7日、人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを発射しました。これに対して国際社会は北朝鮮を非難していますが、制裁措置については合意に達していません。
北朝鮮の朝鮮中央テレビは、7日正午(日本時間同日午後0時半)から「特別重大報道」の中で、「地球観測衛星・光明星4号を打ち上げ、軌道に進入させることに完全に成功した」と伝えました。また、キム・ジョンウン(金正恩)第1書記が6日発射の命令を直接下したとして命令書に署名している様子も写真も交えて伝えています。さらに、国際宇宙開発局の発表として、「「光明星4号は、軌道を回っており、地球観測に必要な測定機器と通信機器が搭載されている。発射の成功は、国家の科学技術と経済、国防力を発展させていくうえで画期的な出来事となる」と伝え、人工衛星の打ち上げだと主張する一方で、これを通じて軍事力の強化をはかっていくことを示唆しています。

中国、アメリカ、韓国、日本など各国の政府は、それぞれ、北朝鮮のミサイル発射が国連安全保障理事会の決議に違反しているとして非難する声明を発表しました。

国連安全保障理事会は、7日、アメリカ、韓国、日本の3か国の要請に基づいて、緊急の会合を非公開で開き、この問題を討議し、会合の後、議長国のベネズエラのラミレス国連大使が、報道機関向けの声明を発表しました。
この声明は、「北朝鮮による弾道ミサイルの技術を使った発射は、たとえ人工衛星だと主張しても、核兵器の運搬技術の開発につながるもので、安保理決議に違反し、強く非難する。核実験のあとの安保理の警告を無視して北朝鮮がとった違反行為に対し、安保理は、迅速に決議の採択を目指す」と述べています。
また、アメリカ、韓国、日本の3か国の国連大使は、共同で記者会見し、核実験に続いて弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対する新たな制裁決議の必要性を強調しました。
一方、制裁決議に厳しい追加制裁を盛り込むことに慎重な立場をとってきた中国の国連大使は、記者団に対して、「新しい決議に向け、安保理は結束して取り組む必要がある」と述べるにとどまりました。
アメリカ、韓国、日本の3か国は、北朝鮮への制裁強化を目指し、各国への働きかけを強めていますが、制裁強化に慎重な常任理事国の中国の出方が注目されています。
なお、1月6日の北朝鮮による核実験のあと、国連安保理は、今回と同様の議長声明をだしましたが、それから1か月以上たっているにもかかわらず、いまだに決議は採択されていません。

・ニュースの用語解説

弾道ミサイル(Ballistic Missile)というのは、強力なロケット推進によって放物線の弾道を描いて長距離を飛び地上を攻撃する兵器のことで、核兵器や化学・生物兵器の運搬手段となります。
ロケットの推進力でいったん空気抵抗のない大気圏外まで上昇し、その後大気圏に再突入します。大気圏外を通ることで遠くにミサイルを飛ばすことができるのです。
弾道ミサイルは、飛距離を伸ばすため、人工衛星などを打ち上げるロケットと同じ技術を使っていったん宇宙空間にまで運びますが、人工衛星は宇宙にとどまって軌道を周回しますが、弾道ミサイルは、弾頭を大気圏内に再突入させ目標に命中させるため、高度な技術が必要だといわれています。

北朝鮮は、1970年代から旧ソ連製のスカッドミサイルを入手してミサイル開発に着手し、首都ワシントンのあるアメリカの東海岸に到達可能なICBM=大陸間弾道弾の実用化を目指して射程の長距離化をめざして開発を進める一方で、近年は、発射の兆候がつかみにくいSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの開発なども行っています。すでに、スカッド(射程 300~500km、弾頭重量 770~1000キロ)、ノドン(1300km、700キロ)、ムスダン(3000km以上、650キロ)は実戦配備しており、テポドン1(2500km、500キロ)、テポドン2改良型(1万km、650~1000キロ)は試験発射の段階です。
軍事専門家によりますと、今回のミサイルは、2012年12月に発射したテポドン2号の改良型に類似した弾道ミサイルで、射程が1万2000kmで、アメリカ東海岸まで届く性能をもっているものとみられています。

・米大統領選挙ニューハンプシャー予備選で、サンダース、トランプ勝つ(2016.2.9)

アメリカ大統領選挙のニューハンプシャー州の予備選挙で、民主党は、サンダース上院議員が得票率60.4%で、クリントン前国務長官の38.0%を大きく上回り勝利をおさめ、共和党は、不動産王のトランプ氏が得票率35.3%でトップ、オハイオ州のケーシック知事が15.8%、クルーズ上院議員が11.7%、ブッシュ元フロリダ州知事が11.0%、ルビオ上院議員が10.6%でした。
今回のニューハンプシャー州の予備選挙は、大統領選挙の各党の候補指名争いの2戦目で、1戦目は、アイオワ州の党員集会で、民主党は、クリントン氏が49.8%、サンダース氏が49.6%で、わずか0.2%の差でクリントン氏が勝利をおさめ、共和党は、クルーズ氏が27.6%でトップ。トランプ氏は24.3%で2位でした。
アメリカの大統領選挙は、各州で予備選挙か党員集会を開いて各党の候補者をしぼっていき、7月に開かれる民主党、共和党それぞれの党大会で大統領候補を指名し、11月の大統領選挙まではげしい選挙戦を繰り広げることになっています。

・ニュースの用語解説

・アメリカの大統領選挙の予備選挙と党員集会
アメリカの大統領選挙では、民主党と共和党は、それぞれ全米50州と首都のワシントンで予備選挙や党員集会を開き、どの大統領候補を支持するかを表明している代議員を選びます。過半数の代議員を確保した候補が7月の党大会で大統領候補に指名され、11月の本選挙で、大統領が決まります。州ごとに予備選挙か党員集会のどちらかを開く仕組みになっていて、予備選挙は、有権者が投票所で投票し、党員集会では、投票や話し合いで決めます。
1976年以降、全米で最初の党員集会や予備選挙を実施するのは、アイオワ州、ニューハンプシャー州の2州に定着しています。

・「重力波」初観測

今から100年前アインシュタインが存在を予言し、世界の研究者が観測を目指していた「重力波」つまり宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象について、アメリカを中心とした国際チームが、11日、初めて直接観測に成功したと発表しました。
「重力波」は、アインシュタインが、1916年に「一般相対性理論」の中で提唱した現象で、ブラックホールなどの天体によって生み出された「ゆがみ」が波となって伝わる現象のことです。この観測は、アインシュタインの「最後の宿題」といわれ、物理学の長年の悲願でした。
研究チームによりますと、2つのブラックホールが合体するときに出た重力波を昨年9月から今年1月上旬まで観測し、分析作業を進めていたということで、2つのブラックホールは、質量が太陽の29倍と36倍ときわめて大きく、観測された重力波は、13億年前に出たものだと説明しています。
「重力波」の観測は、ノーベル賞に値する成果だといわれ、日本の専門家も「天文学の飛躍的な発展につながる」と高く評価しており、今後は、世界各国の科学者による観測データの検証がすすめられることになります。









タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

13.時事問題の基礎入門講座(2016.1.9の講座のテキスト) [2016.1.9の講座のテキスト]

*2016.1.9の講座のテキスト*

今年初めての講座ですので、今年の日本と世界の動向を展望してみましょう。

(a) 日本の政治・外交・防衛

・通常国会(2016.1.4~6.1)
政府は、1月下旬(22日めど)2016年度予算案を国会に提出し、3月末までの成立をめざす方針です。
2016年度予算案は、一般会計の総額が96兆7218億円で、2015年度の当初予算を3799億円上回って、過去最大規模の予算案となり、4年連続で過去最大を更新しています。
通常国会の会期は、6月1日までの150日で、昨年は臨時国会を開いておらず、およそ3か月ぶりに行われる国会の論戦では、2016年度予算案のほか、来年4月消費税率10%への引き上げ時に導入する軽減税率の中身や昨年10月参加12か国で大筋合意したTPP=環太平洋経済連携協定の承認、昨年9月成立しこの3月に施行される安全保障関連法をめぐる問題などが論点です。
政府としては、これらの政策の意義や成果を強調するとともに、5月に開かれる主要国首脳会議・伊勢志摩サミットを成功させ、国会での主導権を握ったまま、7月の参議院選挙に臨みたい方針です。

・参議院選挙
参議院は、定数が242議席で、任期が6年。3年ごとに半数の121議席が改選されます。現在自民党が115、公明党が20の与党が135議席で、自民党単独では過半数の122議席には及びませんが、自民党は、2012年衆院選で圧勝し、政権に復帰し、2013年の参院選、2014年の衆院選と連勝中で、その勢いに乗って、単独で過半数を制したい考えです。また、与党は、衆院の定数475議席で憲法改正の発議に必要な3分の2をすでに確保しており、参院でも、いわゆる「改憲勢力」が3分の2に届くかどうかが焦点の一つになっています。
今回の参議院選挙の特徴は、選挙権が得られる年齢が1945年以来70年ぶりに初めて引き下げられて18歳以上になり、18歳と19歳のおよそ240万人が新たに有権者に加わることと隣接する2つの選挙区を1つにする、いわゆる合区が鳥取・島根と徳島・高知で初めて導入され、1票の格差を是正するため選挙区の定数を10増10減にする改正公職選挙法が適用されることです。
通常国会後半の焦点は、安倍首相が、参院選挙に合わせて衆院を解散し、衆参同日選挙に踏み切るかどうかです。衆参同日選挙は、1980年と1986年の2回しかありませんが、いずれも自民党が圧勝しています。

(b) 日本の経済・貿易

・アベノミックス
アベノミックスというのは、安倍首相の苗字「Abe」と経済学の「economics」を組み合わせて作った造語で、2012年12月に発足した安倍政権の経済政策のことです。それは、長引くデフレ不況からの脱却、持続的な経済成長、経済再生が目的です。デフレ不況から脱却するため、安倍政権は、この的を射抜くため3本の矢を設定しました。
1本目の矢は、大胆な金融緩和政策で、日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が「異次元」と呼んだほど大胆な金融の量的・質的緩和を断行し、世の中に出回るお金の量を増やしたのです。そして、円安、株高を招き、インフレ状況を作り出そうとしました。
2本目の矢は、機動的な財政政策で、政府自身が、公共事業を増やすなどして、景気を支え、刺激するための積極的な予算を組んでいきました。
3本目の矢は、投資を喚起する成長戦略で、法人税の減税や大胆な規制緩和などを実施し、民間企業が持てる力を最大限発揮できるようにするのが狙いです。しかし、これは、雇用や医療・介護、農業などの分野における規制緩和中心の政策で、かなり難しい問題を抱えています。

・新3本の矢ー安倍首相は、2015年9月自民党総裁に再選された後の記者会見で、「アベノミックスは第2ステージに移る」と宣言し、経済成長の推進力として新3本の矢を発表しました。これまでの3本の矢のうち、市場や企業が最も期待した成長戦略が、なお道半ばと評される中で発表されたものです。
安倍首相は、新3本の矢は、2020年に向けた経済成長のエンジンと位置づけ、①希望を生み出す強い経済ーGDP=国内総生産600兆円、②夢を紡ぐ子育て支援ー出生率1.8、③安心につながる社会保障ー介護離職ゼロをあげています。
安倍首相は、この記者会見で、1億総活躍プランを作成し、50年後も人口1億人を維持、デフレ脱却は目前、2017年4月の消費増税10%引き上げは予定通り行うなどと述べました。

2016年の日本経済の見通しについて、民間のシンクタンクなど10社は、原油価格の下落による企業収益の増加やそれに伴う所得や雇用の改善が景気を押し上げると分析しています。
そのうえで、各社は、2016年の経済成長率について、物価の変動を除いた実質は、プラス1.1%から1.6%、名目はプラス1.5%から2.1%と予測し、景気は穏やかな回復を続けるとしています。
その一方で、懸念材料として、中国経済のさらなる減速やアメリカの利上げが新興国や資源国の景気を悪化させるリスクをあげ、その場合、日本経済は輸出の鈍化や企業の投資意欲の低下などを通じ、景気が下振れる恐れがあるとしていまです。
総じて、2016年の日本経済は、中国経済のさらなる減速など海外リスクが懸念される中、好調な企業業績が個人消費や設備投資の拡大につながり、内需主導の力強い景気回復ができるかどうかが焦点です。

(c) 日本の社会

・人口減少と少子高齢化
日本の人口は、昨年1年間に亡くなった人が130万人を超え、戦後最も多くなったことから、9年連続で人口減少となりました。出生数から死亡数を引いた人口の自然減は、29万4000人と過去最多になりました。
厚生労働省が12月31日に発表した人口動態統計の年間推計によりますと、昨年1年間に生まれた赤ちゃんは、100万8000人で5年ぶりに増加に転じ、おととしよりおよそ4000人増えました。
一方、亡くなった人は、130万2000人で、おととしより2万9000人増え、戦後最も多くなりました。
その結果、日本の人口は、9年連続で出生数が死亡数を下回る自然減となり、減少の幅は、29万4000人と過去最大で、少子高齢化に伴い人口減少がさらに加速していることを示しています。

高齢化の状況を総人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合(高齢化率)でみると、国連やWHO=世界保健機関では、65歳以上の割合が7%を超えると、「高齢化社会」、14%を超えると、「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」といっています。
内閣府の「平成27年版高齢社会白書」によりますと、2014年10月1日現在、日本の総人口は、1億2708万人で、このうち65歳以上が3300万人で過去最高となりました。そして、総人口に占める65歳以上の割合は26%となり、すでに日本は「超高齢社会」に突入しているのです。さらに、2025年には、高齢化率は30%に、2060年には40%になると推計されています。
このまま、人口減少と少子高齢化の急速な進展に歯止めがかからなければ、国や社会の存立基盤にかかわる大きな問題となると懸念されています。

(d) 国際情勢

・アジア

1. 北朝鮮水爆実験
北朝鮮が初めての水素爆弾の実験を行ったと発表したことに対して、国際社会は、そろって強く抗議しました。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、北朝鮮は、6日、初の水素爆弾の実験を行い、成功したと発表しました。
この発表は、「水爆実験は、完全に成功した。水爆の技術が正確だということを証明し、小型化された水爆の威力を科学的に解明した」と伝え、「水爆の実験は、アメリカをはじめとする敵対勢力から国の主権と生存権を守り、朝鮮半島の平和と安全を担保する自衛的措置だ」と述べ、「核抑止力を質的、量的に絶えず強化していく」と主張しました。
北朝鮮が地下核実験を実施したのは、2013年2月以来およそ3年ぶり4回目ですが、水爆の実験を行ったと発表したのは初めてです。
北朝鮮は、キム・ジョン・ウン朝鮮労働党第1書記の誕生日にあたる8日、核実験の実施を祝う大規模な集会を開催したほか、ミサイル発射実験の新たな映像も公開し、キム第1書記の求心力を高めるとともに、核開発に加えてミサイル開発を進める姿勢を改めて示し、国威の発揚を狙ったものとみられます。

水素爆弾というのは、原爆の爆発による高温高圧で、重水素や三重水素などの軽い原子を核融合させてできるエネルギーを利用する核兵器のことで、原爆よりはるかに大きなエネルギーが得られますが、高い技術が必要とされるといわれています。

北朝鮮が水爆の実験を行ったことに対して、国際社会は、強く抗議しています。
中国外務省の報道官は、「国際社会があまねく反対していることを顧みず、北朝鮮が再び核実験を行ったことに、中国政府は、断固として反対する」と強く非難しました。そして、北朝鮮から中国政府に対して事前に通告があったかという質問には、「中国政府は、前もって全く知らなかった」と述べました。

韓国のパク・クネ大統領は、国家安全保障会議で、「われわれの安全保障に対する重大な挑戦であるだけでなく、世界の平和と安定に対する挑戦だ」と批判するとともに、北朝鮮に対して「断固たる報復措置をとる」と述べました。
一方、韓国軍は、8日、南北の軍事境界線付近で、大型拡声機による軍事宣伝放送を再開しました。軍事宣伝放送は、北朝鮮が最も嫌がる心理戦といわれています。北朝鮮軍は、軍事境界線付近で一部部隊を増強していると伝えられ、韓国軍は警戒を強めているといわれます。

安倍首相は、記者団に、「我が国の安全に対する重大な脅威であり、断じて容認できない」と述べて強く非難し、「今後、わが国としては、国連安全保障理事会の非常任理事国として、国連安保理における対応を含めて、アメリカ、韓国、中国、ロシアと連携しながら断固たる対応をとっていく」と語りました。
一方、国会の衆参両院は、8日、それぞれ本会議を開き、北朝鮮の核実験に抗議する決議をいずれも満場一致で採択しました。

アメリカのホワイトハウスの大統領報道官は、「水爆の実験を成功させたとの北朝鮮の主張は、われわれの初期分析と一致しない」と述べ、水爆だったかどうかは疑わしいという認識を示し、さらに証拠の収集や分析を続ける方針を明らかにすると同時に、「いかなる種類の核実験であろうと挑発的であり、国連安保理の決議に対する目に余る違反だ」と非難しました。

国連安全保障理事会は、緊急会合を開き、北朝鮮の核実験を非難するとともに、制裁強化を念頭に、北朝鮮に対する新たな決議に向けた協議を始めることを全会一致で決めました。

2. 南シナ海問題

南シナ海は、中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、インドネシアなどに囲まれた海域で、数多くの小さな島や岩礁が点在しています。1970年代にこの海域に石油や天然ガスの存在が明らかになったことから、各国が領有権を主張することになり、対立が激化しています。特に、中国は、この海域での軍事活動を活発化させる一方で、スプラトリー諸島(南沙諸島)やパラセル諸島(西沙諸島)を含む領土境界線(9段線または9点破線)を一方的に主張し、埋め立てや軍事拠点化するなど人工島の建設を進めています。これについて、ASEAN諸国などは強く反発していますが、中国は、これらの国々に対して軍事力、経済力、政治力などあらゆる手段を使って圧力をかけています。
2015年10月アメリカ海軍は、南シナ海にイージス艦を派遣し、中国が作った人工島12カイリ内を航行させる「航行の自由」作戦を展開し、中国の動きをけん制しました。
2016年1月中国の民間航空機2機が、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島のファイアリクロス(永暑)礁を埋め立てて建設した飛行場で試験飛行を繰り返し実施しました。中国当局は、今回の試験飛行によって、「大型の民間機が安全に運航できることが証明された」と述べましたが、領有権を争っているベトナムなど関係国が強く反発しました。

3. 台湾総統選挙

台湾で1月16日に正副総統・立法院選挙(4年に1度)が投開票されます。総統選で有力視されているのは野党・民主進歩党の公認候補である蔡英文主席であり、当選すれば初の女性総統の誕生となります。一方、与党・中国国民党は現職の馬英九総統(現在二期目)の三選が禁止されているため、別の新しい総統候補を出す必要があり、当初は洪秀柱立法院副院長が総統候補として指名されていましたが、洪氏は親中発言で支持率が低迷したことや同日に行われる立法院選挙への悪影響が懸念されたため、国民党は朱立倫主席を新たな総統候補としました。それでも蔡英文氏の勝利が確実視されています。
2008年に発足した現・馬英九政権(国民党)が国民の支持を失った理由としては経済の低迷や格差拡大、相次ぐ不祥事などが挙げられますが、、最も大きな理由は急進的な対中融和政策です。2014年3月両岸サービス貿易協定の批准を巡って議会が紛糾し、学生らは経済的に中国に取り込まれることを恐れて「ひまわり学生運動」と呼ばれる大規模な抗議運動を行いました。
4. ASEAN経済共同体の発足

ASEAN=東南アジア諸国連合に加盟する10か国が、12月31日、域内の貿易の自由化や市場統合などを通じて経済成長を加速させることを目指すASEAN経済共同体を発足させました。
域内の人口は、EU=欧州連合(28か国)を上回る6億2000万人で、域内の総生産が2兆5000億ドル、日本円で300兆円に達する巨大な経済圏が本格始動しました。
ASEAN経済共同体では、域内の関税を撤廃するほか、小売りや観光などサービス産業の自由化、さらに医師や建築士といった特殊技能を持つ人材の移動の自由化などを進めることにしており、経済成長が加速することが期待されています。
しかし、最も発展しているシンガポールと遅れているミャンマーの間の1人当たりのGDP=国内総生産は、およそ60倍の開きがあり、経済格差の縮小が市場統合の課題になっています。さらに、各国には、自国の産業を保護するため、外国企業に対する規制などが残っていることから、こうした規制の緩和なども課題になっています。

・中東

1. サウジアラビア、イランと国交断絶

中東の大国でイスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアが、シーア派の大国イランと外交関係を断絶したことから、中東情勢は、緊張が高まっています。
歴史的、宗教的に見て、サウジアラビアとイランは長い間対立関係にあり、サウジアラビアは、中東地域で大国として君臨し、一方同じシーア派の影響力を強く受けているイラク、シリア、レバノンでは、イランが後ろ盾になり、いわゆるシーア派ベルトを形成しようとする動きがあります。さらに昨年イランの核問題をめぐる欧米との合意、それに続くとみられる経済制裁解除などによって、イランが中東地域で力をつけてきていることに、サウジアラビアが焦りのようなものを感じていたといわれています。
サウジアラビアでは、1年前今の国王になって以降、イエメンの混乱に軍事介入するなど強硬な姿勢をみせていました。1月2日、イスラム教スンニ派の王族が実権を握るサウジアラビアが、反政府のテロに関与したとされる罪でイスラム教シーア派の指導者ニムル師を含む47人の死刑を執行したと発表、これに対して、シーア派のイランは、猛反発、3日、首都テヘランで、サウジアラビア大使館が暴徒化したデモ隊に襲撃され放火されたため、サウジアラビア政府は、ただちにイランとの国交を断絶しました。
4日には、サウジアラビアに続き、バーレンとスーダンもイランとの国交を断絶し、UAE=アラブ首長国連邦もイラン駐在大使を召還するなど、周辺諸国を巻き込んで、事態は深刻化しています。
内戦状態が続くイエメンで、イランの大使館がサウジアラビアの軍用機の攻撃を受けたと伝えられる中、8日イスラム教の金曜礼拝のあと、イラン各地で大規模な抗議デモが行われました。

世界には、イスラム教徒は、およそ16億人いるといわれ、そのうち9割はスンニ派で、残り1割がシーア派です。2つに分かれているのは、預言者ムハンマドの後継者をめぐる違いから生まれたものです。スンニ派は、イスラム教徒の話し合いで選ばれたものがカリフ(ムハンマドの後継者で、イスラム教徒の指導者)になるべきだとし、シーア派は、ムハンマドのいとこで4代目カリフであるアリーの血統を正統とみなすと主張し、激しい宗派の対立が続いています。
今回の対立によって、緊張が一気に高まった中東の2つの大国「サウジアラビア対イラン」という2国間だけでなく、「スンニ派対シーア派」という対立構図が中東地域だけでなく、世界に広がる恐れがあり、サウジアラビアとイランのいわば「代理戦争」となっているシリアとイエメンでの衝突が激しくなる恐れもあります。こうした状況は、勢力が弱まっているとされる過激派組織IS=「イスラム国」を結果的に利することになる可能性もあります。

2. 「IS=イスラム国」の動向

「イスラム国」というのは、2014年6月イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS=Islamic State of Iraq and Syria(al-Sham大シリア)」は、シリア北部からイラク中部にまたがる地域に「イスラム国(IS=Islamic State)」の樹立を宣言、最高指導者アブ・バクル・バグダディを世界のイスラム共同体を率いるカリフ(預言者ムハンマドの後継者)と仰ぐ政教一致国家だと主張しました。しかし、国際社会は、「イスラム国」を独立国家とは認めず、イスラム諸国もこれを認めず、危険視しています。(ISISは、ISIL=Islamic State of Iraq and the Levantとも呼ばれています。Levantとは、レバント地方=エーゲ海および地中海東岸の地方で、シリア、レバノン、イスラエルの地域のことです)
2015年に入って、ISが関係したとみられる主な事件は、1月のパリの新聞社などの連続テロで17人が死亡していますし、10月には、トルコのアンカラでの爆破テロで、クルド人との和平を願う集会参加者ら約100人が死亡したほか、エジプトのシナイ半島でロシア機が墜落し、乗員乗客224人が全員死亡しています。11月には、レバノンの首都ベイルートで自爆テロがあり、40人以上が死亡、また、パリで同時多発テロがあり、130人が死亡しています。

一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際移住機関(IOM)が12月22日発表したところによりますと、2015年に地中海を渡るなどしてヨーロッパ
諸国に流入した難民や移民は、100万人を超えたということです。
2015年は、シリアの内戦などに伴い、中東などからヨーロッパに流入する難民が急増し、1年間でヨーロッパにたどりついた移民や難民の数としては、第2次世界大戦以来、最大規模だということです。
地中海を渡った難民のうち、およそ50万人が内戦の続くシリア出身者と報告されています。

・アメリカ

1. 大統領選挙

4年に1度のアメリカ大統領選挙が11月8日に投開票されます。
今回の大統領選挙の争点は、対テロ対策、移民・難民対策、貧富の格差是正などとみられています。
本命視されているのは、女性初の大統領を目指す民主党のヒラリー・クリントン上院議員(68歳)で、大統領夫人、国務長官などのポストをつとめ、ワシントンの政治の中心に身を置き、最も次期大統領に近い存在です。2008年の大統領選挙以来2度目の挑戦になります。
一方、共和党は、8年ぶりに政権奪還をねらうことになりますが、党の大統領候補の指名争いの行方は明確ではありません。今にところ、既存政治打破を訴えて旋風を巻き起こし支持率トップを走っているのが、実業家のドナルド・トランプ氏(69歳)です。過激な発言を繰り返すたびに支持率が上昇しているとのことですが、「トランプ現象」がいつまで続くのか、ほかに有力候補がでてこないのか、全く予測がつきません。

アメリカの大統領選挙は、4年に1度、11月の第1月曜の次の火曜に投票が行われています。
選挙権を行使できるのは、18歳以上のアメリカ国民で、なおかつ事前に選挙管理委員会に有権者として登録した人たちです。
11月の投票は、有権者が大統領を直接選ぶのではなく、民主党の選挙人か共和党の選挙人を一括して選びます。選挙人の数は、50州と首都のワシントンの合わせて538人で、各州の人口に合わせて割り当てられています。選挙人の数が最も多いのは、カリフォルニア州で55人、最も少ないのが、アラスカ州などで3人です。
各州で、得票数のトップだった党の候補者が、その州に割り当てられた選挙人すべてを獲得する「勝者総取り方式」(winner-takes-all)をとっています。そして、選挙人538人の過半数の270人を獲得した党の候補者が勝ちということになります。11月の投票で、実質的に大統領が決まることになるのです。
12月には、11月に選ばれた選挙人が各州の州都に集まって、大統領を選ぶ投票を行います。それらは、首都ワシントンの連邦議会に送られ、1月に開票され、正式に大統領が明らかになり、就任することになります。

2. FRB=米連邦準備制度理事会(中央銀行)利上げ

アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は、12月16日、2008年12月から7年続けてきた事実上のゼロ金利政策を解除し、政策金利を9年半ぶりに引き上げることを決めました。これによって、世界規模の金融危機に対処したアメリカの金融史上例のない大規模な金融緩和策は終幕を迎え、世界的なマネーの流れを変える転換点となるものとみられています。
短期金利の指標となる政策金利「フェデラルファンド金利」の誘導目標を17日から、現在の年0.25%の実質ゼロの水準から年0.5%に引き上げられます。FRBが利上げを行うのは、2006年6月以来9年半ぶりのことです。政策金利というのは、アメリカの金融機関どうしがお金を貸し借りする際の金利のことで、銀行の預金の利息、クレジットカードや自動車ローン、住宅ローン、企業の有志などアメリカでのさまざまな金利に直接的、間接的に影響を与えます。

・世界経済

・世界同時株安

世界の株式市場は、2016年の年明けから株安傾向が続いています。
主な要因は、中国経済の減速、北朝鮮の核実験、サウジアラビアとイランの対立による中東情勢の不安定化、原油価格の下落などがあげられています。
1月8日の東京株式市場では、中国経済の減速懸念を背景に日経平均株価の終値が前日比69円38銭安の1万7697円96銭と、5日連続で下落しました。日経平均が年明けから5日続落するのは、戦後の1949年5月に東京証券取引所が再開されて以来初めてのことです。
一方、8日のニューヨークの株式市場は、原油の先物価格が下落したことを受け、売り注文が増え、ダウ平均株価は、前日より167ドル65セント安い1万6346ドル45セントで取り引きを終えました。










nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

12.時事問題の基礎入門講座(2015.12.12の講座のテキスト) [2015.12.12の講座のテキスト]

時事問題の基礎入門講座(2015.12.12のテキスト)-11月から内容を変え、直近のニュースを扱うことにしました。

(a)日本の政治・外交・防衛

・自民、公明両党、軽減税率で合意(2015.12.12)

与党の自民、公明両党は、2017年4月消費税を8%から10%に引き上げる時に国民の税の負担を一部軽くする軽減税率について協議を重ねてきましたが、12日に酒類と外食を除く食品すべてを対象に消費税を8%に据え置くことで合意しました。
しかし、これによる税収減の穴埋めに必要な財源は、1兆円にのぼりますが、財源確保の議論は、先送りすることになりました。

・ニュースの用語解説

消費税の軽減税率というのは、生活必需品などに限定し標準税率より低い税率を適用する軽減制度のことです。本来は、低所得者ほど所得に占める税負担の割合が重くなる逆進性の緩和が狙いで、自民、公明両党は、すでに消費税を10%に引き上げる時に軽減税率を導入することで合意しています。日本の消費税に当たる付加価値税を採用している欧州諸国では、EU=欧州連合28か国のうち21か国が軽減税率を導入していますが、区分けや税率は国によって違いがあります。例えば、食料品や新聞・書籍などにドイツは7%(標準税率は19%)、イギリスは0%(同20%)を適用しています。また、ドイツでは、ハンバーガーを食べる場所によって軽減税率が違い、店内で食べると外食とみなされ消費税は19%かかり、テイクアウトすると食料品とみなされ消費税は7%になります。
しかし、軽減税率については、対象の線引きが難しく、販売業者の経理が複雑になるなどの問題点もあります。
今回の軽減税率をめぐる自民、公明両党の協議の背景には、来年夏の参議院選挙を控えているという政治状況があります。

(b)日本の経済・貿易

・7月~9月期の実質GDP=国内総生産の改定値、年率1.0%増(2015.12.8)

今年7月から9月までのGDP=国内総生産の改定値は、年率に換算した実質の伸び率で、プラス1%で、景気は依然として足踏み状態が続いています。
内閣府が8日発表した今年7月から9月までのGDPの改定値は、物価変動の影響を除いた実質で4月から6月までの前期に比べてプラス0.3%、年率に換算してプラス1.0%でした。11月16日に発表された速報値は、年率マイナス0.8%でしたが、企業の設備投資や在庫の増加を主な要因に上方修正されました。
GDPがプラスになったのは、今年1月から3月まで以来、2四半期ぶりのことです。

・ニュースの用語解説

GDP(=Gross Domestic Product)は、国内総生産のことで、その国の経済力を示す指標になっています。GDPは、企業や政府の活動が、国内で一定期間に生み出した経済的な価値の総額を示しています。個人消費や設備投資、住宅投資、公共事業などの「内需」と輸出から輸入を引いた「外需」に分かれています。GDPは、実質GDPと名目GDPがあります。GDPは、物価の変動の影響を受けるため、その影響を取り除き、その年に生産された財の本当の価値を算出したものが実質GDPで、一方それを取り除かず、その年の経済活動水準を算出したのが、名目GDPです。GDPの1年間の増加率を示すのが、経済成長率です。
GDPの速報値の発表からおよそ1か月後に、改定値が発表になります。これは、法人企業統計などの結果を反映して数値を修正した統計で、設備投資や公共投資などが見直され、GDP全体が大きく修正されたり、過去にさかのぼって数値が変わったりする場合があります。

2014年の世界の名目GDP国別ランキング
①アメリカ  17兆3480億7500万ドル
②中国    10兆3565億800万ドル
③日本     4兆6023億6700万ドル
④ドイツ    3兆8744億3700万ドル
⑤イギリス   2兆9500億3900万ドル
(2011年に、GDPで、中国が3位から2位に、日本が2位から3位になりました) 

(c)日本の社会

・「あかつき」金星軌道投入に成功(2015.12.9)

JAXA=宇宙航空研究開発機構は、9日、金星探査機「あかつき」が金星を回る軌道に入るのに成功したと発表しました。
日本の探査機が地球以外の惑星を回る軌道に入ったのは初めてです。
金星探査機「あかつき」は、2010年5月打ち上げられ、その年の12月に金星を回る軌道に入る予定でしたが、メインエンジンが噴射中に壊れ、当時の計画は失敗し、その後、本来の目的から外れて、太陽の周りを回っていましたが、7日、残された小型エンジンを使って金星を回る軌道に入ることに挑戦し、成功したものです。
「あかつき」は、金星の大気の様子などを観測することになっています。
「あかつき」が金星を回る軌道に入るのに成功したことは、機体を損傷しながらも5年前に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」以来の快挙だといわれています。

・ニュースの用語解説

JAXA のHPによりますと、

金星探査機「あかつき」(PLANET-C)とは、火星探査機「のぞみ」(PLANET-B)に続く日本による惑星探査計画で、金星の大気の謎を解明することが目的です。金星は、「地球の兄弟星」といわれてきました。その理由は、金星の大きさや太陽からの距離が地球に近く、太陽系の創生期に地球と似た姿で誕生した惑星と考えられているからです。ところが、現在の金星は、高温の二酸化炭素の大気に包まれ、硫酸の雲が浮かぶ、地球と全く異なる環境です。上空では時速400キロに達する暴風があまねく吹いています。なぜ金星がこのような姿をしているのか、それがわかれば、地球が金星と違って穏やかなる生命あふれる星となった理由や気候変動を解明する手がかりが得られるとみられています。つまり、地球環境を理解する上で重要な探査対象といわれているのです。

・ドローンなど無人機の飛行規制に関する改正航空法施行(2015.12.10)

小型無人機「ドローン」などの飛行を規制する改正航空法が、10日施行され、人口集中地区などでの飛行は原則として禁止されました。
改正航空法は、今年4月首相官邸の屋上でドローンと呼ばれる小型無人機が見つかった事件を受けたもので、さまざまなルールが新たに設けられました。
新たなルールでは、東京23区など国が定めた人口が1平方キロ当たり4000人を超える人口集中地区のほか、空港周辺や地上150メートル以上の上空、それにイベント会場での飛行や夜間飛行などが原則として禁止され、例外的に飛行させる場合は、国の許可や承認が必要です。
違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられることになっています。

・ニュースの用語解説

ドローンは、小型無人機で、複数のプロペラで飛行することができます。飛ぶ音がミツバチの飛ぶ音に似ていることから、ミツバチのオスを意味する「drone」と名付けられました。
偵察、空爆など軍事目的の開発から始まり、宅配や人が立ち入れない場所の点検作業など民間ビジネスへの応用が進んでいます。GPS機能で遠隔操作できるものやプログラムミングで自動飛行できるものなどがあります。カメラ付きのものは、手軽に空撮できるため、個人利用も進んでいます。値段は、1万円台から1000万円台を超えるものまであり、国内では2000機ほど普及しているものとみられています。

(d)国際情勢

・ノーベル賞授賞式(2015.12.10)

今年のノーベル賞の授賞式が、10日スウェーデンの首都・ストックホルムで行われ、2人の日本の科学者が、医学生理学賞と物理学賞をそれぞれ受賞しました。
今年のノーベル医学生理学賞の受賞者は、日本の北里大学の大村智(おおむら・さとし)特別栄誉教授、アイルランド出身でアメリカのドリュー大学の名誉リサーチ・フェローのウィリアム・キャンベル氏、中国の中医科学院の屠ユーユー氏の3人でメダルと賞状が贈られました。
受賞の理由は、アフリカなどで寄生虫が引き起こす熱帯感染症に大きな治療効果をあげた特効薬を開発した業績です。
一方、今年のノーベル物理学賞の受賞者は、日本の東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章(かじた・たかあき)教授とカナダのクイーンズ大学名誉教授のアーサー・マクドナルド氏の2人でメダルと賞状が贈られました。
受賞の理由は、重さがないと考えられていた素粒子「ニュートリノ」に質量があることを証明し、宇宙の成り立ちや物質の起源を解明するのに大きな影響を与えたことです。
日本のノーベル賞受賞者は、これで24人になりました。

一方、今年のノーベル平和賞の授賞式が、同じ10日、ノルウェーの首都・オスロで行われ、中東・北アフリカで広まった民主化運動の「アラブの春」以降のチュニジアの民主化を後押しした市民社会の枠組み「国民対話カルテット」が受賞しました。
「国民対話カルテット」は、チュニジア最大の労働組合の組織チュニジア労働総同盟、全国弁護士会、人権擁護連盟、産業商業手工業連合の4つの団体によって2013年7月に作られた枠組みで、2010年末に始まった「ジャスミン革命」で独裁政権が倒れた後、対話によって政治的対話を解消し、民主化を後押ししたことが認められて、ノーベル平和賞を受賞し、4人の代表にメダルと賞状が贈られました。

・ニュースの用語解説

ノーベル賞(Nobel Prize)は、ダイナマイトの発明者として知られるスウェーデンのアルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel)の遺言によって1901年から始まった世界的な賞のことです。物理学、化学、医学生理学、文学、平和、経済学の6分野で顕著な功績を残した人物に贈られます。
授賞者の選考地球には、物理学、化学賞、経済学賞の3部門はスウェーデン王立科学アカデミーが、医学生理学賞はカロリンスカ研究所が、平和賞はノルウェー・ノーベル委員会が、文学賞はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行っています。

・宇宙飛行士の油井さん、地球に無事帰還(2015.12.11)

国際宇宙ステーションに5か月近く滞在していた日本人宇宙飛行士の油井亀美也さんが、アメリカとロシアの2人の宇宙飛行士とともに、ロシアの宇宙船「ソユーズ」に乗って、11日、中央アジアのカザフスタンの草原地帯に着陸し、地球に帰還しました。
油井さんの健康状態は、良好だということです。
油井さんは、元航空自衛隊のパイロットで、日本人10人目の宇宙飛行士で、国際宇宙ステーションに今年7月から5か月近く滞在し、8月には日本の宇宙輸送船「こうのとり5号機」をロボットアームでキャッチするなど重要な任務をこなしました。

・ニュースの用語解説

国際宇宙ステーション(ISS=International Space Station)には、アメリカ、ロシア、日本、ヨーロッパ諸国など15か国がプロジェクトに参加し、総質量450トン、全長108メートル×73メートルで、1998年から建設を開始し、2011年のスペースシャトルの最終フライトで完成しました。当初の運用期間は2016年まででしたが、2024年までの延長が見込まれています。
国際宇宙ステーションには、日本実験棟「きぼう」(JEM=Japanese Experiment Module)があり,
国際宇宙ステーションの中では、最大の実験モジュールです。これは、船内実験室(外径4.4メートル、全長11.2メートル)、船内保管室、船外実験プラットホーム、船外パレット、ロボットアームから構成されています。

・パリのCOP21閉幕へ(2015.12.11)

パリで開かれている地球温暖化防止を話し合う国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議=COP21は、11日、会期を1日延長し、12日に最終合意をめざすことになりました。
会議は、11月30日から開かれ、条約に加盟している196の国と地域の代表が参加し、2020年から実施する地球温暖化対策の新しい国際的な枠組みづくりを目指しています。先週は事務レベルで、今週は閣僚レベルでの交渉を続けていますが、先進国と開発途上国が、温室効果ガスの削減や途上国に対する支援などをめぐってきびしく対立しています。
会議の議長であるフランスのファビウス外相は、11日の会議で、各国に、これまでの議論を踏まえた合意案を示し、これをめぐって各国の代表の間で激しい意見の交換が行われましたが、まとまりませんでした。ファビウス外相は、会期を1日延長して12日に修正した最終案を示し、各国の合意を取り付けたい方針です。ファビウス外相は、合意に強い自信を示しており、12日に合意に達すれば、1997年に採択された京都議定書以来18年ぶりの国際的な枠組みが出来上がることになります

・ニュースの用語解説

地球温暖化(global warming)とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により、地球の気温が高まり、自然や生活環境に各種の悪影響が生じる現象のことです。これに対応するためには、各種の温室効果ガスの排出削減(省エネルギーやフロンの削減など)、温室効果ガスを吸収する森林の保護や植林などが必要です。

温室効果ガス(GHG=greenhouse gas)というのは、太陽の放射熱と同量の熱が地表から赤外線として宇宙に放射されることで大気の温度はバランスを保っていますが、この赤外線を一部吸収するガスのことです。二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、オゾン(O3)などがあり、これらの濃度が高まると気温が上がることになります。特に二酸化炭素は、石油などを燃やすと発生し、現在の巨大化・高度化した経済活動と密接な関係があります。

京都議定書(Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)というのは、1997年に京都で行われた第3回国連気候変動枠組み条約の締約国会議のことで、COP3(Conference of the Parties)ともいいます。2005年発効し、現在191か国およびEU=欧州連合が締結しています。二酸化炭素、メタンなど6種の温室効果ガスを対象とし、2008年~2012年の間に先進国の締約国全体で1990年に比べて5%以上削減することを目標に、各国ごとの法的拘束力のある数値目標を定めました。(日本6%、アメリカ7%、EU=欧州連合8%など)。しかし、2001年アメリカが離脱し、日本とロシアも、京都議定書の第2約束期間(2013年~2020年)には、参加せず、中国やインドなど新興国や途上国は、削減義務がないことから、もともとの京都議定書は、骨抜きの状態になっています。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC=Intergovernmental Panel on Climate Change)というのは、国連環境計画と世界気象機関が共催し、各国政府が参加している会合で、地球温暖化などについて報告書をだしており、それは、 最も信頼できる科学的情報とされています。
IPCCは、2014年11月地球温暖化をめぐる最新の研究成果をまとめた報告書を公表し、今のペースで温室効果ガスの排出が続けば、今世紀末には人々の健康や生態系に「深刻な広範囲にわたる後戻りできない影響が出る恐れ」が高まり、 被害を軽減する適応策にも限界が生じると予測し、各国政府に迅速な対応を迫っています。 国連気候変動枠組み条約の第20回締約国会議(COP20)が、2014年12月ペルーで開かれ、各国が自主的に温室ガス削減目標を掲げることを基本に新しい枠組み作りを目指す合意文書を採択し、2015年パリで開かれるCOP21で合意を目指すことを決めました。今回のパリの会議には、アメリカ、中国なども参加していることから、合意が期待されています。

・北京の大気汚染、警報最高レベルに(2015.12.8)

中国の首都・北京市では、大気汚染が深刻になり、市政府は、最高レベルの大気汚染警報を発令し、厳しい交通規制を敷き、小中学校も休校にするなど市民の生活に大きな影響が出ています。
北京市政府は、7日、深刻な大気汚染が72時間以上続くとして、大気汚染に関する4段階の警報のうち最高の「赤色警報」を初めて発令しました。北京市内では、8日も、大気汚染物質PM2.5の濃度が1立方メートル当たり300マイクログラムでした。これは、1日平均35マイクログラムとしている日本の環境基準をはるかに超えるものです。
北京市政府は、市内全域で車両のナンバー規制を敷き、8日は、末尾が偶数の車しか走れなくなりました。また、小中学校や幼稚園は、ほとんどが、8日から10日まで臨時休校になりました。さらに、市内の企業2100社には、操業停止などの措置が取られました。
北京市政府は、10日まで車の走行の制限や大気汚染物質を排出する工場の操業停止などの措置を続けることにしていて、市民の生活に影響が広がっています。

・ニュースの用語解説

PM2.5(particulate matter 2.5)というのは、微小粒子状物質のことで、大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5μm(1μm=1mmの1000分の1 μ=マイクロ)以下の非常に小さな粒子のことです。
微小粒子状物質(PM2.5)には、物の燃焼などによって直接排出されるもの(一次生成)と環境大気中での化学反応によって生成されたもの(二次生成)とがあります。
一次生成粒子の発生源としては、ボイラーや焼却炉など煤煙を発生する施設、コークス炉や鉱物堆積場など粉塵を発生する施設、自動車、船舶、航空機などのほか、土壌、海洋、火山など自然由来のものや越境汚染による影響もあります。また、家庭内でも、喫煙や調理、ストーブなどから発生します。
二次生成粒子は、火力発電所、工場・事業所、自動車、船舶、航空機、家庭などの燃料燃焼によって排出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、燃料燃焼施設のほかに溶剤・塗料の使用時や石油取扱い施設からの蒸発、森林などから排出される揮発性有機化合物(VOC)などのガス状物質が、大気中で光やオゾンと反応して生成されます。
微小粒子状物質(PM2.5)は、粒子の大きさが非常に小さい(髪の毛の太さの30分の1)ため、肺
の奥深くまで入りやすく、喘息や気管支炎などの呼吸系疾患への影響のほか、肺がんのリスクの上昇や循環器系への影響も懸念されています。
日本では、微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準(人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準)として、「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均が35μg/m3以下であること」と定められています。また、健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準として、注意喚起のための暫定的な指針となる値を1日平均値70μg/m3と定めています。
中国の大気汚染による日本への影響については、西日本の広い地域で環境基準を超えるPM2.5が観測されていますが、これは、中国大陸からの越境汚染と日本の都市汚染の影響が組み合わさっている可能性が高いと報告されています。



タグ:時事問題
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。